(秋圃君の歌 禿山子 ※亡くなった同人への追悼文〜省略)
雑詠 湯禿山
かぎりなき心のゆくへ我にかへり小田の蛙のなく音乏しも
國はらの青田中道ゆく馬車のうまのたてがみ風あかるなり
なつ山のあよみのつかれ靴ぬぎて愛のほとりを風にふかすも
眞玉をも石をもわかず人の面にあるべきものと持たる眼二つ(寄目)
しきしげる松の下つ邊もるゝ日のかそけき動き胸にしむるも
雨晴れのすかしき風を朝起の身のさちとしも野にふかれ立つ
梅雨あがり峰立つ雲のうごめきに時や夏なる力こもれり
閴として寂寞にみつる夜下ちを物あり動く我むねの門に
ともし灯の心をいくたひかゝぐとも油乏しき人の運命か
いそなるや鴨の雛の母さらずねむるをみればこらをしおもほゆ
素足ゆく野邊しすがしも白雨の過ぎにしあとの風かをりつゝ
むねにあまる思をのせてゆく汽車の窓の外の面は灰色にみつ(以下臨時上京の歌)
二十年のむかしかへりみ心おづる今のわが身をわれとむちうつ
なまよみの甲斐の峡を汽車出てゝ人よみかへるむさし野の風
汽車の内に五月蝿なす人みつれとも迭みに心ゆるさぬらしも
工場の笛の聲々うまゐする都をさましうつそみに入る
☆☆☆
「閴」→ 音読み「ケキ」訓読み「しずか、ひ、そり、ひっそり」
信濃同人号ということで信濃人の文と歌が多数。もちろん禿山さんも。
このころ立て続けに同じ信濃の若い歌人が亡くなり、追悼文や追悼歌も多し。
<つづく>
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