禿山さん(14):アララギ第3巻第7号(信濃同人号)その1

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(秋圃君の歌  禿山子  ※亡くなった同人への追悼文〜省略)

 雑詠    湯禿山

かぎりなき心のゆくへ我にかへり小田の蛙のなく音乏しも

國はらの青田中道ゆく馬車のうまのたてがみ風あかるなり

なつ山のあよみのつかれ靴ぬぎて愛のほとりを風にふかすも

眞玉をも石をもわかず人の面にあるべきものと持たる眼二つ(寄目)

しきしげる松の下つ邊もるゝ日のかそけき動き胸にしむるも

雨晴れのすかしき風を朝起の身のさちとしも野にふかれ立つ

梅雨あがり峰立つ雲のうごめきに時や夏なる力こもれり

閴として寂寞にみつる夜下ちを物あり動く我むねの門に

ともし灯の心をいくたひかゝぐとも油乏しき人の運命か

いそなるや鴨の雛の母さらずねむるをみればこらをしおもほゆ

素足ゆく野邊しすがしも白雨の過ぎにしあとの風かをりつゝ

むねにあまる思をのせてゆく汽車の窓の外の面は灰色にみつ(以下臨時上京の歌)

二十年のむかしかへりみ心おづる今のわが身をわれとむちうつ

なまよみの甲斐の峡を汽車出てゝ人よみかへるむさし野の風

汽車の内に五月蝿なす人みつれとも迭みに心ゆるさぬらしも

工場の笛の聲々うまゐする都をさましうつそみに入る

☆☆☆

「閴」→ 音読み「ケキ」訓読み「しずか、ひ、そり、ひっそり」

信濃同人号ということで信濃人の文と歌が多数。もちろん禿山さんも。

このころ立て続けに同じ信濃の若い歌人が亡くなり、追悼文や追悼歌も多し。

<つづく>

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このページは、raizoが2014年4月29日に書いたブログ記事です。

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