著者は、オーストラリアの「生物哲学」の先生。基本的には哲学がご専門のようですが…
私の避けている分野の1つが哲学。哲学系の方の文章の難解さに眠たくなり、なかなか読み進められません。
この本も、出だしこそ海の中でのタコとの出会いから始まり、海洋生物学的な雰囲気もあります。掲載されている写真はほとんどイカ・タコの生態写真です。イカやタコが属するのが頭足類。かなりさかのぼれば、人間含め脊椎動物と同じ祖先から別れていますが、魚や鳥に比べるとかなり遠い親戚です。
タコの脳や神経はかなり発達しているので、はたしてタコに「心」というものがあるのか…というところから論が始まります。それは哺乳類を含めた脊椎動物にしても、どうやって「心」が生まれ、発達してきたのかという問題にもつながり、科学的というよりは哲学的な分析がなされます。
哲学的なお話になると、ちょいと難解になりますが、生態学者との交流もあり、生態学的に興味深い話も多く、なんとか最後まで読むことができました。
なにしろ、タコは恐竜が出現する前の2億年近く前からすでにタコであり、すでにその時点で海の中で最も賢い生物だったのではないかということですから、タコ先輩はすごい。
生物の進化の過程で、脊椎動物の枝とはかなり以前に別れてしまったけれど、「意識」という観点からは独自の進化をとげたのではないか…という話に、なるほどと思わされました。
哲学なのだけれど生物学という不思議な1冊。今後さらにタコの生態が解明されると面白そうです。
日本の近海ではタコ類の水揚げが減少してきているようですが、三陸、特にお隣の南三陸町では名産にもなっていて、マダコ・ミズダコがたくさん獲れます。東京ではタコというとモロッコなどの海外産ばかりでしたが、さすがに石巻では地元産のみ。今は季節的にもミズダコ中心で、太い足が魚屋さんに並んでいます。海の中ではどうしていたのかな…と、魚屋さんでもちょっぴり思いを馳せております。
という訳で、日本でタコの先生といったら奥谷先生。イカ・タコの著書多数です。
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