「山の上の家」のこと。

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庄野邸表札
先日の2月11日、上京して(正確に言うと神奈川県川崎市ですが)生田の山の上の家に行ってきました。2018年から年2回、2月11日の建国記念日と秋分の日に一般開放される、作家の庄野潤三さんの家です。

庄野家へ | 夏葉社

公開は来年までという話も聞き、公開当初からぜひ行ってみたいとずっと思っていたので、ほかの用事も作って思い切って行ってきました。

実は20代後半にお隣の駅、向ヶ丘遊園に住んでいて、逆にこんな近くにあったのか...と思うくらいの場所でした。小説の中にも、向ヶ丘遊園に買い物に行くエピソードもあって、そんなところにも馴染みを感じながら本を読んでおりました。

石巻を始発で出発し、新宿で荷物を預けて小田急に乗り換え。小田急線はもう長年慣れ親しんでますから違和感なく乗り込みます。複々線化も完了し、快速急行に乗るとあっという間に登戸についてしまいました。登戸で各駅停車に乗り換えて向ヶ丘遊園を通過し、生田で下車。その先の読売ランドでは下りたことあるのだけれど、生田は初めて。

夏葉社さんのサイトに載っていた地図を見ながら、坂道を上って庄野邸に向かいます。自分の実家(通称「山の家」)に向かうのもそれなりに坂道で、平屋で庭があり、昔は目の前が畑で遮るものが無く、風あたりが強かった...という条件も、どこか庄野さんのお話に共感してしまうポイントの1つではありました。

Z坂
途中、小説に出てくるOKストアや団地、野球場、公園などを通りすぎ、目の前にZにつづれ織りになっているZ坂が見えてきました!わっ、あれだ〜。(写真に写っている家はヨソの家です)

Z坂から東の眺め
とても天気が良かったので、坂から眺望抜群で、新宿副都心のビル群までよーく見えました。富士山も見得たのだけれど、他のおばさまが記念撮影をしていたので遠慮。小田急線はとにかく線路がほとんど真っすぐで、駅周辺からでも正面の箱根の向こうに富士山が見えるところが多いのです。

庄野家より
Z坂を登ると、庄野邸には家の周りにも中にもすでにたくさんの方が集まっていてびっくりしました。お家の前では、講談社文芸文庫から出たばかりの「庭の山の木」(庄野潤三)と、夏葉社の「山の上の家」、そして発売前の「山の上の物語: 庄野潤三の文学」(上坪裕介)を販売中。本を販売していた夏葉社の島田さんにご挨拶して、中に入りました。

庄野家本棚
中はたくさんの見学者でごった返していましたが、小説の舞台となっているお宅を拝見できてとにかく感無量。全体的にこぢんまりしていて、お台所も想像していたより狭いのにびっくり。そのお台所で長女の夏子さんが、女性ファンのみなさんに小説に出てくる「かきまぜ」の説明などをされていました。図書室や書斎の本棚の本もゆっくり見ることができましたし、アルバムや直筆原稿、日記なども並べて下さっていて、記念館のようです。お庭も、書斎からの眺めも素晴らしかった...。

ここに来る直前に、予習で手持ちの庄野潤三本を一気に読んできたので、私もわくわくしながら見学することができました。最後は調子に乗って、新刊2冊も購入。上坪さんの本は、出版されることが知っていたのだけれど、ちょっと高いしパスかな...と考えていたのですが、夏葉社の島田さんが販売していたのでつい買ってしまいました。

庭の鳥たちのための牛脂
ちょうど本を買っていたときに、たまたま毎回公開のたびに仙台から来ている方と、田尻町(宮城県)出身の方とお会いしました。その後帰路でZ坂を下りる途中で、先ほどの田尻町出身の方が足を止めて景色を眺めています。つい声をおかけしてそのまま駅までご一緒することになりました。

私よりはずいぶん歳上の男性で、庄野邸は2回目だったそうですが、庄野さんの作品のお話や、小説に出てくる公園やお店の話をひとしきり。そして石巻の話になり、小学生の頃には十條製紙(今の日本製紙)の工場見学に行った話や、仕事で石巻に行った話などもうかがいました。駅で別れる時に、こちらに来て同郷の人と話したのは初めてかもしれないなぁ...とおっしゃっていましたが、私も庄野さんの話ができて楽しかったです。最後は(今回の訪問が)いい思い出になりますよ、と言っていただきました。

庄野邸はとにかく良いところで、なにかとても心が洗われました。思い切って行って本当に良かった。庄野ファンで行くか行くまいか迷っている方は、ぜひとも行ったほうがいいですよ!

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このページは、raizoが2020年2月14日に書いたブログ記事です。

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