曾根博義『私の文学渉猟』(夏葉社):古書漁りの趣味と実益

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私の文学渉猟さて、夏葉社さんの新刊2冊目、曾根博義『私の文学渉猟』を読み終えました。

曾根さんは、近代文学者として伊藤整を中心に研究されていた方です。本の厚みはこれまでの夏葉社本の中で最大392ページ…かと思いきや、一番は伊藤整の『近代日本の文学史』433ページでした。ふむ。

何度も申していますが、本好きだと言いながら、文学には疎くて恥ずかしいくらいですので、今回は少し構えて読み始めました。


本の一番最初のエッセイは、集めた本の置き場に困る話。本好きのあるあるで、蔵書家には永遠のテーマでもあります。お、つかみはOKだ…と思ったのですが、その後はどんどん「文学」寄りの内容となりました。

とは言え、決して大学の論文のようなものではなく、大半は「日本古書通信」という古本屋さんの業界紙に掲載された文が中心です。 曽根さんは職業柄(?)古書蒐集家(古本マニア)でもあったからなのですが、この本の中にも、古書から文学と文学者を掘り下げる話がたくさんでてきます。趣味と実益を兼ねていた訳ですね。

古い文芸誌から、作家の単行本未収録の短編を見つけるなどの話もでてきます。古書を漁って、結果そういった新発見が見つかると当然うれしいでしょうし、古書漁りもどんどん楽しくなるでしょうねぇ。古本的なところに妙に感心しました。「第一藝文社をさがして」もそうでしたが、古い本からまだまだ新しい発見があるというのは、古書の醍醐味でありましょう。

後半は専門の伊藤整について。このあたりは私には少し難しかったかな。でも、あらためて同じ夏葉社さんの、伊藤整『近代日本の文学史』を読み返そうと思いました。

先日の『第一藝文社を探して』もそうでしたが、古書が大きなキーワードでした。私にとっては少し歯ごたえのある一冊でしたが、近代日本の文学好きな方、古書好きな方におすすめです。

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