逃亡者の社会学 アメリカの都市に生きる黒人たち

| コメント(0)
舞台がフィラデルフィア、そして黒人社会というところに興味があって読みました。

副題の通り、フィラデルフィアという都市に生きる黒人青年たちの社会を、ユダヤ系の白人女性である著者が、フィラデルフィアの黒人居住区に6年間暮らし、そこで黒人達とつきあい、その中で自ら体験したことをレポートしたルポルタージュ的な、そして実は社会学の論文がもとになった本です。社会学ですから「フィルドワーク」ですね。


若い頃から麻薬や銃のからんだ犯罪に関わり、警察や司法から常に逃亡し、時には刑務所に収監されるとう、日本人の私からするとドラマの中のできごとだけれど、それが本当にここでの日常であり、特別なことでもなんでもないというのがまず驚きです。2010年前後の話なのですが、このようなことが今でもアメリカの都市部では続いているのだろうか…。

貧困がもたらす…と一言では言い表せない。親子、兄弟、子ども、配偶者(というか子どもの母親?)…すべてがこの特殊な社会構造の中で、特殊な関係をもちつつ絡み合って成り立っていて、白人達の中で根強く残る根底にある差別感情と、近年のアメリカの司法システムの対応の変化が、こういった社会構造を生み出してしまったように思えます。

感想文は下手なので詳しくは読んでいただくとして。

2013年頃に始まった「Black Lives Matter」運動も、日本から見ると単純に白人の警官が黒人に対して過剰な暴力をふるっていることをきっかけに起きた、人種差別に抗議する運動…という単純な認識でした。しかし、この本を読んで印象が変わりました。いま現実として恵まれた立場にいる黒人の方達は、こういった社会のことはよーく知っていて、だからこその抗議活動でもあったんだろうな。あらためて底辺のアメリカ黒人達が置かれている社会について学ばせてもらいました。

そういった意味で、こういった本が世に出たことも含め、アメリカってすごい国だなと感じて本を閉じました。

コメントする

アーカイブ

子規の一句

花一つ一つ虻もつ葵かな

くものす洞広告

このブログ記事について

このページは、raizoが2022年8月 9日に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「大きいiMacが出てこないと次はMac miniかなという気もしている。」です。

次のブログ記事は「トンボの季節到来。」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。