Tokuzanのブログ記事 4 / 5
    
    



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アララギ第4巻第1号

雑詠
          湯禿山

枯尾花風もさやらずおく霜のしろきがうへにけだものゝの跡

白菊の香にしむ心うつそみのちまたのどよみしばし和めり

朝戸出のはざま山路霜さむみ肌泌むるかぜにはなひるしばしば

蟹自物おのが甲らに似する穴のあなにみにくき言の搆へよ





アララギ第3巻第9号

雜 詠
                   湯禿山

大君のみことかしこみはらからと睦まさらめやかの人の子を

大君の遠のみかどの民草と今日ゆ心も伸びてあれこそ

いくとせをつかへし胸の忽ちに秋の空とをはれし今日かも

谷川に子らが蟹とる水上よ河しかの聲ころゝなかるゝ





アララギ第3巻第8号 その2

洪水

國はらをこと〴〵(ごと)海とまがつ日の神のあらびし耳にかしこし

遠つ祖ゆ傳へし田畑非時の長雨にあはれ海となりつゝ

唯命みなことなしと友が書きし筆のあとをし見るに堪へめや

命はしからくにげつも文かゝむたどきもなくて七日過ぎつと

救はれて溺れこそせぬたらちねの母のありかも知れずとふ兒よ





アララギ第3巻第8号 その1

病床の歌(其二)    湯禿山

あかときの灯のうする我望今日もはかなくなり果てむかも

春が山のわらび肥ゆらめ程ちかくわがやどれども足なへしにて

こらがこせる文をし見れば病みこやる身もたな知らずこひまさるかも

ガラス戸ゆふと見さくれば梅雨はれの月ほの照れり五日月かも

久方の天津少女にたて琴とあさいに耳にひびくあめかも





アララギ第3巻第7号 その2

病床の歌 其一

今歳初夏聊か恙ありて長野赤十字病院に入り三週を經、其間病床の徒然に讀み出でたる歌の中に、

うつそみのかなしきになれ石くれとなりにし人か情お動かず

うつそみの世事と知りつゝしかすがに人のなぐさのうれしかりけり

大峯の山の背向に飯綱嶺もほのかにわれをなぐさもるらし

家にあらはわ子がためにも鯉のぼり立てましものを病みてやせたり

青あらしわたらふまにま久方の天雲しぬく鯉のぼりかも

瑞枝さす若葉の杜をゆきかひの人うらやまし窓によりみる





(秋圃君の歌  禿山子  ※亡くなった同人への追悼文〜省略)

 雑詠    湯禿山

かぎりなき心のゆくへ我にかへり小田の蛙のなく音乏しも

國はらの青田中道ゆく馬車のうまのたてがみ風あかるなり

なつ山のあよみのつかれ靴ぬぎて愛のほとりを風にふかすも





第3巻第6号

雑詠

 ○            湯本禿山

なく鳥ののどかにちらふさくら花まひる静かに野ゆかへる人

ほしがきによきとう柿の實なし柿實なきこともてわが罵られけり

白かねの灯静かに春の夜を琵琶ひきふけて雨もよかりき





第3巻第5号(その2)

浅葉会(信濃松本)4月會

           禿山

春の野の草のみどりをふみてゆく心の和み若やぎにけり





第3巻第5号(その1)

詠草      湯本禿山

さ庭べの井尻の水に物足らふ魚ならましを悶えあらずば

わがむねの濁らひゆゑにみるまなこくゞもりてのみ過ぎしいくとせ

中つ瀬の島なす岩に尾をふりて鶺鴒(にはくなふり)のともこひまつも

春がすみ立てる岩がねのこゞしき山も凡に和めり

春がすみたな引く末のうすらぎの空の和みになんのとりぞも

花ぐもり夢のおぼろに打ちなごみ市も里べもたそがれにけり

菅の根の永き春日を温泉かへりの幼な少女等足読たゆしも





第三巻第四号

 若みどり
          湯本政治

ついに我に逆はぬ妻をあやしくも時に物足らず思ふことあり

銀河に北する空の遠はろにのぞみ湛ふる星のかゞやけり

碧瑠璃と風のぬぐへる遠のはてにちりのくもりと鳥渡る見ゆ

春の夜の街につらなる燈火し月の光とおぼろに和めり

春なれや暮てかへるもしかすがに土の出代とむね長閑なり

柳けむるおぼろ月夜野河岸にして人のさゝめき似たる聲かも

打和み春を湛ふる若みどりから松の森は夕日浴みつゝ


 

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