Tokuzanのブログ記事 5 / 5
    
    



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第三巻第三号

 選歌   左千夫選

雑詠 ○ 湯本政治

清き湯のそこの仰伏す吾がむくろまだたのみありとわれは思へり

打ちわたすみちのゆくては天きらいたそがれさまに雪ふるさんか

新としをほがひの醉いにかへるさの眼におも白し雪ちらゝ振る

風をいたみ羽さかれ冬されの田の面をあさる庭つとりかも





選歌   左千夫選

 荒涼   湯本政治

柿の實の残をあさりはむからす嘴鳴らしなく冬の山里

もたえたえむねのあれ野の路すさび千筋のまよひかへりかねつも

うらふれてわが見る空のちぎれ雲あふこともなく黄昏るゝかな





第2巻第4号 その2

麻葉會

十一月十二日湯本禿山廬(いおり)に開く會する者四人庭前二歩の菊稍(やや)衰えたれとも聊か(いささか)同人の興を添へたり村醸を酌むて歌界を評し談論風發更下つて止む爐を囲み雑魚寝す作歌には努めざりしも「霜」「道」の二題を分て得たるところ

(柿村・麦雨・科野舍)※他の三人
 
                 政治
霜がれの河原あらはに落ちたぎつ白木綿波は見るもまぶしも





第2巻第4号 その1

選歌 左千夫 選
 北陸行       湯本政治

 礪波山を過ぎて

いとまあらば徒歩ゆきわたり信濃らのますらたけ男が跡ふまましを


 七尾にて

鹿島のやみなと七尾の汝れゆゑに静みし戀に波を起こせり(鹿島の娘子に戯れて)

朝ほらけ梶の音のどかにかまめらの床押しわけて船さかる見ゆ





アララギ第2巻第3号

北陸行
           湯本政治
旅にして月の今宵をこしの海のつらつら吾家しおもほゆ
 (注)繰り返し「〈」





アララギ第2巻第2号

選歌 左千夫選
  青木湖遊草
                  湯本政治

秋すみの湖の邊にして馬草かる鎌の音さやに吾耳にたつ
月低く湖邊あしむらほのあかりしき鳴く蟲を過ぎしかねつも
湛へたる湖の心静けきにたぐへて山の黙し居るかも
おもしろく黙し静める水海の心とも見む星うつる浪
そこひなく黙せる湖に向ひ立ちすゝろに悲し吾がいとこゝろ
湖離れくらきに見れば杜の間ゆ湖の面光り湖浮きて見ゆ
奥山の湖のべにして農の家に一湯かりつも夕つつの下
かきろひの八重棚雲に日影もれて色沈むうみの暮をかへせり





アララギ第1巻第3号

選欄 左千夫選
雑歌 湯本政治

靡〔なび〕きたる底ひの玉藻ゆら〔〳〵〕にひそめる魚等すきて寒しも

※注:〔〳〵〕→縦書きの繰り返し記号(2文字分で、「く」の字の長くなったような文字)





自分で書き写している禿山ノート、次号分を打ち込もうと開いてみたところ、また次ページに続きがあり、第1巻第1号にはあと3首ありました。

 ※夕方庭に立ち出でゝ

夕顔の棚の葉かけに月待つに飽かぬものかも白く咲く花

平瀬丘の尾に立つ松に光さしねごもる月のさやけくしぬばゆ

月代を待宵草の野に立てば現さながら世に隔たりぬ。





本日より新しいコンテンツ「禿山さん」を始めたいと思います。曽祖父の湯本禿山(ゆもと・とくざん)、本名湯本政治が、雑誌「アララギ」に投稿していた短歌をご紹介していきたいと思います。

親族以外にはあまり関心をもっていただけないかとは思いますが、もともとテキスト化するつもりでしたので、平行してブログにも掲載していこうと思います。実はノートへの書き写しもしているのですが、これがまた意外と量があるのです…。やれるだけやってみます。

ということで、まずは「阿羅々木」の第壱巻第壱號(第一巻第一号)から。


 

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