植物考古学と最新の植物生理学により、地球の気候や環境への関わりが解明されていきます。
これまで地球上の大気中の二酸化炭素の濃度は、実は高くなったり低くなったりしていて、それがナウシカに出てくるような巨大な昆虫を生み出したりしたのだけれど、その濃度に大きく影響していたのが「植物」の存在でした。
根底にあるのは常に二酸化炭素と植物の関係であって、とにかく「そうだったのか」と何度も驚かされました。
植物考古学によって、太古の昔の環境がわかってきたことに加え、今の時代の植物の生理のしくみが解明されてきたことにより、植物がどうやって地球の環境に影響を与えてきたのかもわかってきました。
北極や南極もかつては気温が暖かくて森があったり、そうかと思うと氷河時代になったり、地球の環境(温度・大気の成分・大気圧など)は長い時間をかけて大きく変動しているのですが、その本来長い時間をかけて変化していく環境を、人間というたった1種類の生物が、ものすごいスピードで人為的に変えてしまっています。
化石燃料などを燃やして二酸化炭素の排出量を増やし、この本の主人公でもある植物もどんどん減らしています。オゾン層の破壊もそうですね。長い年月をかけて深海の底にたまったメタンハイドレートをとり出して燃やすのも…どうなのかなぁ。
「地球温暖化」と言われているのはわかっているけれど、今一つ実感できないのは、日常的にすぐに自分たちにはねかえってこないですし、話のスケールが大きすぎるからなのかもしれません。でもこの人間の破壊力の凄さは、やがて恐竜たちのように、人類が滅亡してしまう始まりなのかもしれないと思う反面、植物の偉大さも感じた読後でした。
だったらやはり二酸化炭素の排出の少ない原子力が必要だ…と話にもなると思いますが、放射線もまた、人間の手では除去することのできないやっかいな「人工物」の1つ。二酸化炭素の急増がもたらす気候の変化も、放射能に汚染されて収拾がつかなくなることも、どちらもたいして違わないような気もしました。
とにかく、多くの研究者の名前と学説・研究が登場し、地球と植物にまつわる新しい世界を知ることができてうれしいというのが素直な感想で、その新しい知識を反すうすべく、もう一度読み直してもいいかなと思うような本でありました。
敷居が高い本ではありますが、意外と読み物としてもイケますよ。
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