はじめは「生態学における蜻蛉目〜教科書の中のトンボ」。教科書といっても、小学校の理科レベルではなく、大学の「生態学」レベルで、のっけからグラフや数式が登場し、数式が出てきた時点で、果たして最後まで読み切れるのか一抹の不安を感じましたが、そのあたりはさらさらっと読み飛ばして先へ。
つづいて「習性学」→「生理生態学」→「行動生態学」→「個体群生態学」→「群衆製が医学」→「景観生態学」→「保全生態学」→「蜻蛉目の生態学 トンボの存在意義」というのが全体の流れになります。
いろいろとタイトルはついておりますが、要は生息環境、卵・幼虫(ヤゴですね)・成虫、交尾と産卵、餌、分布など、これまでのトンボの生態学的な研究結果が体系的にまとめられています。
正直言いまして大学の教科書的な難しさはありまして、誰もが気軽に読める本ではないかもしれませんが、著者の渡辺先生もあとがきで書かれている通り、トンボの愛好家が書く本とはまた違った、学問としての「生態学」の本になっています。
それほどトンボに詳しいという訳ではありませんから、初めて知る内容もたくさんありました。
アカネ類の水田との関係も、種類によって違うということ、水にお尻をつけて産卵するタイプだけでなく、上から落とすタイプもあること。いわゆるつながりトンボがつながっている理由、交尾の時のスタイルのこと、トンボの体温調節のことなど、トンボの行動の理由が「生態」にも関係があるということなんですね。
つながりトンボは、交尾の後に雄が前になってそのまま産卵場所に飛び、雄ががんばって上で飛翔しながら、お尻を何度も水面につけるという産卵行動で、エネルギーを使うことになる雌の飛翔を助けているのだそうです。すごいなぁ。
ヒヌマイトトンボの話も随所に出てきます。ヨシ原に住むトンボだということは知っていましたが、逆にヨシ原にしかいない(もうずっとそこで暮す)トンボだったのですね。そんなヒヌマイトトンボの保全「ミチゲーション」の話もでてきます。ヒヌマイトトンボもいつか実物を見てみたいものです。
読みながら、秋につながりトンボが東から西の空に大群になって飛んで行く姿(いつもの私の原風景)や、今思えば体温調節のために西日のあたるブロック塀に止まったトンボを次々と捕ったことなどを思い浮かべながら読みました。空を川の流れのように飛ぶトンボの大群はいつかまた見てみたいのですが、それが見られる場所は、だいぶ少なくなってしまったのでしょうね。残念。
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