毎回楽しみにしている夏葉社さんの新刊は、中古レコードショップ「円盤」の店主、田口史人さんの「レコードと暮らし」であります。CDではありません、「レコード」ですよ!
表紙は、平屋の縁側でポータブルレコードでソノシート(だと思うのです)を聴いている兄弟の絵で、それだけでほのぼのして来ました。
筆者の田口さんとはほぼ同世代で、80年代のヒットチャートを一番良くチェックしていて、その後はあまりチャートを追わなくなったというあたりも一緒。レコードはもとより、ソノシートも「懐かしい」と感じる古い世代であります。
中身は、レコードのジャケットとその解説(?)。表紙の印象とは違い、中をめくりますと一見レコード紹介本のようにも見えますが、この本はちょいと違っております。
まずは「レコードってなに?」という基本から始まりまして、その派生製品であるソノシートやフォノカードの説明。そして付録・オマケ・多方面にわたるジャンルの自主製作盤の、それぞれのレコードにまつわるバックグラウンドを想像&推測しつつ、200枚以上が紹介されています。
まず見たことのある盤は登場しません。様々なジャンルの自主製作盤にびっくりします。音源こそ聴くことができませんが、中身を楽しみながら読むような感覚ですね。今でこそCDはPCで誰でも作れるようになってしまいましたが、「レコードになる」ということのスペシャル感は今以上だったと思います。
ソノシート、かつては家にも何枚かありましたが、あれは薄いので、普通のレコードの上に載せて聴くんですよね。TV主題歌のものを中心に何枚か持っていましたが、実家の味のあるドーナツ盤ボックスと、他のドーナツ盤と共に行方不明となりました。そんな自分の体験を頭の中で巡らせつつ読みました。
あとがきは「送り溝」というタイトルがついていて、おもわずニヤリとされられました。最後にレコード盤の最後の輪につながる急な溝のことですよね。
「送り溝」を読み終わると、最後はレコード盤を聞き終わった後に最後の溝で針がまわり続ける時の、「プツンプツン」という音が聴こえてくるようなそんな気持ちになりました。
今回も下北沢の「古書ビビビ」さんで購入。お隣はdiskunion下北沢店ですので、そのままレコードもプレーヤーも買えますよ。
最近diskunionに行くといつも感じるのですが、ここはCDよりもレコードを買い求めている方のほうが多いような気がします。外国人の方がどかんと買っているところも何度か見かけました。下北沢周辺の他の中古レコードショップが次々閉店になっているということもありますが、レコードもまだまだどっこい生き残っています!
思わず読後に古いレコードを引っ張り出したくなる一冊です。
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