いつも楽しみにしている(毎回同じフレーズですね)夏葉社さんの新刊が出ました!
今回は京都の古書店「善行堂」の山本善行さんが選んだ埴原一亟(ハニハライチジョウ:読めませんね…)さんの小説集です。しかも「古本小説」というのは一体どんな小説なんでしょうか…。
帯に「忘れられた作家」とあるように、私のような文学に疎い者にとっては初めて聞く名前です。でも、きっと善行さんが勧めてくださったのなら期待を裏切ることはないはず…と早速読み始めました。
主に戦中・戦後の話が中心ですが、ほとんどのお話にちらりちらりと古本が出てきます。露店で古本を売るという話、屑ゴミ集めを生業としている人達と屑の中から本を拾い出す人の話、脱サラして商店街でお店を始めた古本屋さんの話…などです。題材が古本ということもあってか、思いの外サラサラと一気に読み終えることができました。
屑物集めの人達の話は、意外と淡々と話が進むのですが、その情景がなんともリアルで、著者が潜行取材もしくは携わっていたとしか思えない描写です。現代ではもう無くなってしまった商売ですね。
一番良かったなと思ったのが資金繰りに苦しむ商店街の古本屋さんのお話。実家を抵当に入れてしまったり、謎の出資者が現れたり、借金の返済に苦しんだり…。読んでいる側は「大丈夫なの?!」と心配するハラハラ感、返済のあてがないのにこの先どうなっちゃうのというハラハラ感など、展開も地味なのにちょっとドキドキさせられました。
巻末の善行さんの解説によると、デパート勤めをしていた頃の体験をもとにした小説もあるのだとか。ちょっとそちらも気になります。
地方ではまずお目にかかれない小説家の本が、こうやって新刊で読めるなんて本当にありがたいです。自分では絶対にたどり着けません。
文学に疎い私(読んでせいぜいミステリー)が、文学って面白いなと思うようになったのは、夏葉社さんの本のおかげだと思います。今回も楽しませていただきました、いつもありがとうございます!
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