北海道のある町に住む一家というか一族のお話です。(以下ネタバレあり)
時間軸が前にいったり戻ったりするので、最初は話が飲み込めないところもあったけれど、だんだんと話の進み方がわかってくると面白くなってきました。
合間に出てくるライチョウの話、釣り、物理学・天文学の話、キリスト教や教会・牧師の話、そしてタイトルにも関係する北海道犬の話。ところどころに妙に専門的な話が混じり、独特な印象もあります。特に北海道犬は、ストーリーにも関わってくるのだと思うのですが、そこはちょっと理解しきれなかったかもしれません。(もう一度読まないとダメかな。)
主人公は誰ということもなく、静かに話が進むのだけれど、最終的には一家のうち最後に残されるであろう弟の始が主人公ということなのでしょうか。お姉さんが亡くなったあと、再び時間軸が戻り、おそらく高校生時代のお姉さんが北海道犬と散歩に出るくだりでは、亡くなった時のエピソード以上に妙に悲しくなって涙してしまいました。
そして一転して最後にはその弟が、残された一家の高齢者・介護問題に直面するという展開になるのですが、それでも話が深刻になるというわけでもなく、なにかこう淡々とした雰囲気のまま話は終わりになります。
主題は家族の話であり、大学進学と共に都会に出ていく地方出身者の気持ち、地方に住む親達、そして一族の未婚のおばさん達や親達の高齢化…など、若い人たちにはもしかしてピンと来ないところもあるかもしれないけれど、中高年には特に響くものがあります。
帯文には「読後、しばらく黙っていたくなる小説」とありましたが、ほんとうにそんな感じの読後感でした。読了後も冒頭あたりのエピソードが気になって、もう一度最初のほうを読み返してみたりしています。
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