ご自身のブログや、「月刊みすず」に連載していた内容などをまとめたものです。
THE BRADY BLOG
タイトルから想像して、イギリスの上流階級と貧困層の格差の話かなぁ…と想像していたのですが、そう単純なことではなかったですね。
イギリスの社会福祉制度が、政治によってしばしば方針転換されることで、フレイディさんが働いていた託児所も、貧困層や障害者の福祉から移民政策重視へ、そして最後にはフードバンクになってしまうことで閉鎖になってしまいます。
そんな福祉政策の流れの中で、入所している貧困層の子どもたちとその親(主に母親)が抱える様々な問題、増える移民の子どもたち、そして移民層の親たちと英国人の貧困層の関係などなど。なかなか厳しい現実のエピソードが多いけれど、そんな中でも子どもたちとの心の交流もあり、希望の持てるエピソードもあり…。子どもたちの話ももちろんですが、ブレイディさんをはじめとした託児所で働くメンバーの話も印象的です。
特に印象に残ったのがアニー(・レノックス似の託児所責任者)。出てくるたびにこの呼称で登場します。(アニー・レノックス好きとしてはその度にニヤリとされられます。)上司で無くなった後もたびたび登場し、この福祉託児所、そしてブレイディさんにとっても大切な人物だったのでしょうね。子どもたちをなんとか救いたいと奮闘していたアニーもまた、政策の方針転換に翻弄されてしまったのかな。その後どうされたのでしょう…。
いや、それよりも、この慈善活動が打ち切られたあと、このような子どもたちの受け皿はどうなったのかということの方が気になります。
「階級闘争」というタイトルは堅いけれど、とても読みやすい文章で、後半はエッセイ的なところもあり、みすずの本にしてはとてもとっつきやすい本だと思います。
格差社会というのはどんなことなのも垣間見えましたし、イギリスという少し遠い国の話ではあるけれど、いずれ日本でも、いやすでに日本でもこんなことが起こっているのかも…と思わされました。
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