私は、最初は「指輪物語」の翻訳者として瀬田貞二さんを知りました。子どもの本の分野で有名な方であることは、その後知りました。
古本屋さんの棚で、分厚い「落穂ひろい」などの著書を見かけるたび、読んで見たいと思いつつ、価格の高さとその厚みに恐れをなしていたのですが、今回この本は、瀬田さんの「落穂ひろい」「絵本論」「児童文学論」のガイド本にもなっていて、この本を読んでいるうちに、他の本も読めるのでは?という気持ちになってきました。
「瀬田貞二伝」というタイトルでしたので、てっきり普通の評伝かなと思っていたのですがさにあらず。瀬田さんの担当編集者だった著者が、東京子ども図書館主催の「瀬田貞二氏の仕事」という講座で講演した内容を本にしたものでした。
ですから、著者の荒木田さんが語る瀬田さんのお話というスタイルなので、講演会を聞いているような雰囲気。荒木田さんの優しい語り口もあって文も読みやすく、400ページ以上あるのに思いのほかスラスラと読めました。
何より、瀬田さんがとても素敵な方だったということが大きいですね。本のことというよりも、子ども達のことを本当に気にかけていらっしゃって、子ども向けの本のための翻訳やネーミングのセンスが、独特の日本語の音の響きや言葉の選び方があり、それは何より子ども達のことを思ってのことである、ということが素晴らしいです。多くの子供に、本をめくる楽しさを味わって欲しい…という気持ちが伝わって来ます。
残念ながら62歳で亡くなられてしまったそうですが、きっともっともっと子どもの本のことを探求したかったのだろうなぁ。そして今のこの電子メディアが溢れる世の中を見たら、どう思われたのだろう…。
子どもには、画面のスワイプよりもページをめくって良い本を読む方が、人間形成にも脳にも絶対いいに決まってます。本好きっ子をもっと増やすためにも、瀬田貞二さんのこと、もっと多くの人に伝わるといいと思いました。
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