第三巻第四号
若みどり
湯本政治
ついに我に逆はぬ妻をあやしくも時に物足らず思ふことあり
銀河に北する空の遠はろにのぞみ湛ふる星のかゞやけり
碧瑠璃と風のぬぐへる遠のはてにちりのくもりと鳥渡る見ゆ
春の夜の街につらなる燈火し月の光とおぼろに和めり
春なれや暮てかへるもしかすがに土の出代とむね長閑なり
柳けむるおぼろ月夜野河岸にして人のさゝめき似たる聲かも
打和み春を湛ふる若みどりから松の森は夕日浴みつゝ
海 民部里静 選
湯本禿山
風なぎて油湛ふる海のそこの深くも一人思ひ沈めり
濤いかるありそにきほふ木枯のやゝに和みてさよふけにけり
雲 千樫 千
湯本禿山
年ふりし鏡のくもりぬぐへども晴れざる思ひうたゝ迷へり
くろ雲はむら山しめて國はらをたゞ一息と寄せて來らしも
☆☆☆
毎号出ていた「お題」には、まめに投稿していたようだ。前号の編集後記で、先生(伊藤左千夫)自らが応募しているのだから、もっと積極的に投稿すべしと読者に呼びかけていたところ見ると、初期は投稿がなかなか集まらなかったのか?
コメントする