アララギ第3巻第9号
雜 詠
湯禿山
大君のみことかしこみはらからと睦まさらめやかの人の子を
大君の遠のみかどの民草と今日ゆ心も伸びてあれこそ
いくとせをつかへし胸の忽ちに秋の空とをはれし今日かも
谷川に子らが蟹とる水上よ河しかの聲ころゝなかるゝ
久方の天の河ぎり立ちこむる白々あけよ初かりの聲
眼ふたげば面影に立つますらをや千曲河邊の三太刀七太刀(五句は地名)→原本の注釈
むねの内にくゆる烟のいふせくもうつそみの夜をたとるわれかも
蓮たのかれはの上にゆく秋の雨の音さゆるこの夕かも
行く秋を病めるが柄にたま【たま】のよき歌かなしうたは無くとも【くの形の繰り返しのかな】
恙なくあが思ふ方にゆく水を心ともなく唯にうらやむ
淺間嶺の佐久の十里はくまも落ちず草うら枯れて秋老にけり
痩せ花のあづかに殘るかれ原や立たす佛にゆく秋の風
いねの穂の頭をかろみ鎌いるゝ力なしとふあはれみ民ら
☆☆☆
※忽ちに(たちまちに)
※烟(けむり)
今回は自然派の歌が多くてわかりやすい。
いつもこうだとありがたし。
コメントする