アララギ第4巻第3号
詠草
湯禿山
古の驛路(うまやぢ)の宿旅人われ一人のせきの部屋にさむしも
年まねく太刀の音きかずふるさとの古き武者窓あられうつなり
逐うてうて(繰り返しの「く」)物とらへ得ぬ萎えとしも年の名殘の黄昏にけり
冬されの野末の石につかれたる心の冷を夕日あむえうも
草はらに流れてきゆる水の音遠くかぞけく心ゆくかも
うつそみを咀ふもろもろ(繰り返しの「く」)集ふかにくれゆく年のいふせくもあるか
いさら川かはべ立ちぐゝみそさゞゐ暮れゆく年の安居せぬかも
ゆく滊車の窓のくゞもりいぶせくも一人こもらふ雪の黄昏
相知らぬ旅人と二人言もなく唯たそがるゝ雪の汽車の内
打霧らす雪の紛れよはつはつ(繰り返しの「く」)に下ちゆく夜の灯さむしも
こゝだくの望の光むなしくもうもれし墓に木葉ちるなり
☆☆☆
最後の歌は、望月光という若い同人の死を悼んだもの。この次の号が望月光追悼号となる。その少し前に堀内卓というこれもまた若い同人が亡くなっており、立て続けに若い仲間が亡くなったらしい。年はかなり離れていたはずだが、同人として集まったりもしていたようなので、ショックも大きかったのでは。
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