アララギ第5巻第3号
上京
湯本 禿山
物云へばいきも氷るかに人皆が只もだしつゝうづくまりをり
朝日子のかゞよふなべに窓に凍てしいき薄らぎて汽車甲斐に入る
魂合の友の面みるすなはちに百里の望みなから足らへり
◯
冬の夜を外ゆか減る子の刻み足門べ近くにいやせかるらし
にくまるゝことを恐れて良きことゝ知りつゝ元な吾が黙しけり
心には否と思ひしをよわ〱(繰り返し)しおぞの心よ言いつくろひぬ
明らかに否と答へば吾が胸のこのくゞもりははれましものを
わが一人こえにし雪のわらぐつの大くつのあと眼にちじるし
泣くといふ一つの術に悲しみをやり得る人をかなしみに思ふ
野可のそがひに殘るはだれ雪うらさぶしくも鳥一羽立つ
雪 石原 純 選
湯本 禿山
うつそみにつかれし心故郷の方ゆく雲をうらやみ見るも
ことさやりふた分れせし天雲のかの高山に宿り和むか
雲を單純に假人視する考は昔からあったものゝやふに思ふ、
但後首では比喩が稍複雜になつてゐるが、もう少し進んで頂きたい氣がする、
嵐凪ぎし朝の雲の切れ〱゛によべの名殘を思ふもかしこし
☆☆☆
ときどき上京していたらしく。
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