夏葉社さんの新刊は前川恒雄さんの「移動図書館ひまわり号」。久しぶりの復刊モノです。
そしてこのお話の舞台は東京都日野市。今、私が毎日仕事に通っているところですよ。日野市の図書館は昔は何かで有名だったような話は、どこかで聞いたことはあったのですが、私自身は職場近くの高幡図書館に1度行ったことがある程度でした。その日野市の図書館事業がスタートし、軌道に乗るまでのお話です。
日野の市立図書館は、この本の著者である前川さんが始めた移動図書館ひまわり号から市の図書館事業が始まったのだそうです。知らなかったなぁ。でも思い返してみると公園の一角に来ているひまわり号を見た事があったんです。そうか、あれか…。
日野市図書館のページ
・日野市立図書館のあゆみ
・移動図書館『ひまわり号』いまむかし
私ぐらいの世代であれば、そこそこの規模の市であれば、図書館はあって当たり前だと思っていました。小学校の頃から、わざわざ市立図書館に通ったクチでしたので。
しかし、移動図書館開始当時の周りからの風当たりの強さは、読んでいる私にとっても予想外で、東北の田舎ならまだしも、東京でも(いやしかし、当時はまだまだ田園風景の広がる地だったか?)こんなことがあるんだなぁ…と驚きながら読み進みました。市立とはいえ、当時の職員の方たちは、図書館のために日野にやってきた方が多かったのもあるのでしょうね。役所のやりかたとちょっと違うみたいなところが。
役所の縛りや一部の役人・議員などハードルはいくつもあり、悔しい思いを抱えながらも地域に図書館が受け入れられていくわけですが、オトナのドロドロした部分との戦いの記録でもありますね。ちょっと身につまされました。
でも、職員の皆さんの努力で少しずつ貸し出しも増え、市民に支えられて事業が軌道に乗っていく様子は、本好きとしては嬉しい限りです。
新しく書き加えられた前川氏のあとがきには、最近の憂うべきことに少し触れられています。図書館も直営から指定管理制度をとるところが増えており、ツタヤ図書館も有名になりました。しかし、専門の職員が正職員ではないケースが増えてきており、図書館の質も問われています。
無料貸本屋と揶揄されることも多い図書館、ベストセラーをたくさん購入するなど、貸し出し数至上主義的なところもあるのでしょう。作家からの反発があったのも記憶に新しいところです。
でも自分を振り返って見ると、就職するまでは本も思うように買えませんでしたから、図書館はよく利用していました。いろいろな本を読む習慣は図書館利用で身についたと思います。自分で買えるようになれば好きだったら買うんですよ。
街の本屋さんもめっきり減ってしまった今、わざわざ出向かなくても来てくれる「移動図書館」は、本に触れる良い機会ではあると思うのだけれど、外遊びもあまりしない子供達、スマホ世代の若者たちは「本を読む事」をどう感じているのだろう…と少し心配に思ったりしながら本を閉じました。
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