序章を読み始めると確かにその通り、手塚のプロフィールから始まりましたが、続けて藤子不二雄のお二人、石ノ森章太郎、赤塚不二夫というトキワ荘メンバーが続きます。決して手塚寄りというわけでは無い。手塚治虫を筆頭とする、トキワ荘に出入りした漫画家たちのこと、そして当時の日本の漫画出版の歴史について、たくさんの参考資料を基に丁寧に描かれています。
漫画の草創期に重要な役割を果たした少年倶楽部、漫画少年、そして現在につながる講談社、小学館、集英社などの出版社がどのように漫画を出版してきたのか、当時のマーケットやそれぞれの出版社の成り立ちなど、漫画出版史部分もきちんとページが割かれていて勉強になりました。
トキワ荘に出入りするメンバーがそれぞれが絡み合ってのマルチな評伝になっており、かといってそれば薄まることなくしっかりした内容、さらに漫画出版の出版史にもなっているという大作だと思いました。素晴らしい。
これまで、トキワ荘関連の本は、かなり読んできた方だと思いますが、それぞれのメンバーが自分の目線で書いたものがほとんどです。そんなトキワ荘本も片っ端から参考にして、事実と思われることを検証しながら書かれている訳ですから、情報量の多さではダントツです。
私、なにしろトキワ荘の漫画家さんたちは大好きですから、この本には感銘を受けました。いやすごい。読み終えて、手塚先生の偉大さというよりは、藤子、石ノ森、赤塚がちがいかにすごい漫画家なのかを痛感させられました。これまで私の中では長く「手塚>藤子>赤塚>石ノ森」の序列でしたが、石巻に帰ってきて石ノ森先生の偉大さを痛感し「手塚>藤子>石ノ森>赤塚」くらいになっていたのですが、赤塚不二夫の評価も急上昇。この本を読み終えてみると、甲乙つけがたいというか、みんな天才だったのではと思わされました。
1つ残念だったのは、藤子、石ノ森、赤塚が「トキワ荘」でくくられてしまい、タイトルだけではこの内容が伝わらないところ。タイトルを長くするわけにもいきませんから、仕方なかったのかなとは思いますが、手塚ファンというよりは、漫画の草創期に興味のある方みなさんに読んでいただきたいです。
さて、この本を読み始める前から、どうもこの著者名はみたことがあるのだけれど、なんだっけ?と思っていたら、あとがきをみると「江戸川乱歩と横溝正史」の著者でした。読みましたよこれも。この本も2人作家の関係がかなり詳しく描かれていて面白かったのです。なるほど納得しました。
コメントする