ちゃんと読み切れるのかと心配でしたが、読み始めたら面白くてあっという間でした。やはり私はこの手のノンフィクションが好きなんだなぁ。
まずは青年が鳥の標本を盗むシーンからスタート。東大の博物館の展示で鳥の標本を見たことがありますが、足を折りたたんでお腹をみせて横たわる鳥の標本(丸のままです)がゴロリと、そしてそれがたくさん引き出しに並んでいる姿はなんとも不気味な感じがしたものです。あんな感じか…。
かと思えば170年前のダーウィンの時代に飛び、盗まれた標本が収集された時代から、御婦人の羽飾りのために鳥が乱獲された時代、そして現在もなお続く鑑賞のための(釣りの)毛針の世界へ。それがやがて鳥の標本が盗まれるという奇妙な犯罪へとつながります。
鑑賞のためだけの毛針の世界というマニアックな狭い世界なのだけれど、絶滅危惧種のことだったり、ワシントン条約だったり、ネットオークションやネット販売だったり、意外にも今時な犯罪でもあり、
そうかと思えば博物館の存在意義まで考えさせられる欲張りなお話でした。
ただ、ラストは最後まで追いきれなかったようなところがあり、ちょっと消化不良ですかね。
社名のとおり普段は化学を中心とした科学系の理系な本ばかり出している化学同人さん。装丁も文芸誌並みにステキに出来ていて、見た目も中身もバッチリでした。
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