小野和子さんは、50年に渡って宮城県を中心に東北の村々へ出向き、地元の方からお話を聞いて民話を集めて来られた方です。お名前は存じていましたが、詳しいことはほとんど知りませんでした。この本は、小野さんが民話を求める過程で出会ったエピソードが、そのお話しと共に語られています。
訪問先はいわゆる田舎ばかり。今、その村々の風景や人の営みがまだ残っているのかどうかも危ういだろうな…と想像しながら、それでも出会ったおばあちゃんやおじいちゃんの姿がぼんやりと浮かんでくるような文章でした。
小野さんの「民話」に対する考えが要所要所で出てきますし、登場する民話もきちんと解説され、民話初心者でもわかりやすく、興味のわく内容でした。出てくる宮城弁も違和感なくスラスラ読めますしね。話がかなり訛っているところにかなり臨場感があるというか、目の前で語ってもらっているような感覚にさえなります。
心情としては、そういった地元の昔がたりが伝承されて残って欲しいと思うけれど、いまや親から昔語りを聞くような習慣もほとんど無いでしょうし、本の中でも「語る相手もいない」とおっしゃっている方が多く、すでにみなさんが亡くなられているであろうことを考えると、時代の流れとともに消えるところだったわけです。ああ、もったいない。
小野さんの活動により、地元の民話がなんとか記録に残せたことはもちろん、私としてもそういった世界を知ることができて良かった。これまでは「民話」というと「むかしむかし…」といった昔話のようなものだと思っていたけれど、今でも、あらたな民話が生まれていることも知りました。そして…最終話のご主人から聞いたというお話をもとにした「ゆめのゆめのサーカス」というお話、とてもとても素敵なお話でした。
小野さんが中心になって集めた民話、まとまって読んでみたくなりました。石巻市図書館には全部揃ってないんだよなぁ...。
ということで、実はこちらの本。私の「くものす洞」でも販売しておりますので、送料は実費となりますが、興味をもたれた方がいらっしゃればぜひどうぞ。
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