お話は、現在の南相馬市出身の男性が、上野でホームレス生活をしており、過去を振り返りながら話が進んでいきます。
南相馬のくらし、前のオリンピックの時の高度成長期と出稼ぎ、引退、そして身近な死、東日本大震災...主人公のこれまでの人生が、上野公園でのホームレス生活の様子と供に描かれます。
もちろん、小説のストーリーも良かったのですが、なにより上野公園のことが事細かに描写されていて、上野勤務時代を思い出し、実はそこが一番面白かったりしました。かなり上野公園とホームレス事情を取材されたのだなぁ...と感心しきり。
上野公園には、桜ばかりでなく、実はいろいろな施設が点在していて、マイナーなもの(野口英世像とか古墳、動物園の弁天門など)まで登場するので驚きました。彰義隊の話、寛永寺の話など、上野の歴史の話もありますし、上野恩賜公園管理事務所のホームレス管理の様子や、炊き出し事情、食べ物入手や現金の稼ぎかたまで出てきます。
秋になると、ホームレスさんたちが公園の銀杏を拾い集め、なかには店に売らずに公園内で自分で売っている人もいました。空き缶を袋一杯に集めている人もよくみかけます。上野公園でお花見をすると、後半はホームレスさんたちが残りを求めて集まってきますし、年に何回かある動物園の無料開放日には、ホームレスさんたちも動物園にやってきます。そんなことを懐かしむ読書となりました。
あまり参考にならない読書感想ですが、上野公園に興味のある方は読んでみると良いと思います。
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