散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道 梯 久美子 新潮社 2005-07-28 by G-Tools |
著者がまさに「硫黄島からの手紙」を読んだことをきっかけにして、栗林中将と家族とのつながりを軸に、硫黄島の玉砕戦について書かれたドキュメンタリーです。
玉砕戦については妙に神格化せずに事実が淡々と書かれている一方、栗林中将の家族との関わりについては、読んでいて胸をうつものがあります。このあたりの描かれ方は、女性ならではの視点ではないかと思いました。敵方の米軍がその戦い振りに敬意を払うほど、リーダーとしても優秀であったろうと思われるのに、時代は彼を冷遇していた面もあり、戦争の愚かさも再度痛感させられました。戦後生き残った栗林家の2人のお子さん、長男の太郎さんと次女のたか子さんも、残念ながらこの本の完成前に亡くなられたとのこと。最近栗林人気を天国から見てびっくりされていることでしょう。
映画のほうは結局二宮君の映画に仕上がっていて、栗林中将の話は意外とさらっとした扱い。映画だけでは消化不良気味だったのですが、この本を読んでその穴が埋まったような気がします。
実はこちらのビデオも観賞。こちらは硫黄島の戦いで生き残った人たちのインタビューを中心に構成されたドキュメンタリーだったのですが、本当に辛かったのは玉砕戦が終わった後、地下壕に立てこもっていた時期だったようです。その証言する様子からも、辛い体験がにじみ出ていましたし、戦争が終わって60年以上経過した今でも、その記憶と戦っているかのようでした。
こうやって証言できる生き残った人たち(ほとんどが傷病兵だったとか)も、年々少なくなって行く中、日本軍あっぱれ...というだけではないお話として映画が作られたことは、もう一度戦争を考え直す良い機会でした。これが日本映画として作られていたら「伝説の玉砕戦」としてどうしても戦闘も神格化されてしまうような気がしますし、そういう意味で「硫黄島からの手紙」は日本映画でなくて良かったのかもしれません。
こんにちは
映画は見ていませんが、NHKスペシャルの番組はリアルタイムで見ました。
耐えきれずに投降しようとする兵士を味方である日本兵が背後から撃ち殺す。「玉砕」、狂った美学ですね。今の日本人の感覚にもそれが残っている気がします。
>今の日本人の感覚にもそれが残っている気がします。
私もそう感じるときがあります。他の国ではなかなか考えられない、日本人的な考え方だと思っていましたが、今の北朝鮮を見ていると、似たような感覚を覚えることもあります。