なんと土器の底についた昆虫の圧着痕から探る考古学なのでした。
生乾きの土器を並べるときに、土器の下敷きになった昆虫がそのまま底にくっついてしまったり、くっつき跡が残ったりするわけですが、その痕跡から昆虫種を同定して、その昆虫の生態を元に当時の暮らしを想像します。
主な主役は「コクゾウムシ」。主にお米など穀物につく害虫ですが、最近は普通の生活の中ではめっきり見なくなりました。縄文時代の日本だけでなく、古代ヨーロッパや古代エジプトなどでもみつかっており、人間との関わりの歴史はかなりの古さです。痕跡の残る昆虫として、他にヒラタムシやゴミムシダマシ、ゴキブリ、ハエ、シラミ、ダニ、ノミ、フンチュウまで!
面白いなと思ったのは、昆虫考古学から、昆虫種の世界への広がり(主に人為的)もわかってくるということ。もうこうなると日本でも縄文時代からすでに外来種が入ってきています。人間の活動が地球の自然に与える影響はかなりのものですね。
個人的に害虫に関係した昆虫学の先生にはなじみがあり、よくお名前を聞く先生達の本も登場しました。害虫という概念は、栽培植物を育てるようになってから発生したものですが、それは人間が自然に逆らって創った環境を好む昆虫が増えてしまっただけで、それもまたある意味人間が作り出したものでもあります。
この本の最後でも、「まったくムシのいない世界というものも人にとっては良い環境とは言えない」といったフレーズで終わります。まったく同感です。
語り口はやさしいのですが、図版は電子顕微鏡写真も多く、パラパラめくると昆虫専門書のようにもみえ、気軽に楽しめる内容とは言えないかもしれません。でも、ある意味新しい研究分野として、小畑先生が嬉々として研究されている様子がうかがえて、そういったところを楽しんで読ませていただきました。
先生の「タネをまく縄文人」、読みたいと思っていたのです。やっぱり読もうかな。
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