待望の夏葉社さんの新刊、同時に2冊入手したうちのまず1冊を読了。京都の古書店善行堂の店主、山本善行さんの編集による『上林暁の本 海と旅と文と』です。夏葉社さんから出版された上林暁さんの本はこれで4冊目。すべて山本善行が関わられています。私も夏葉社さんの本で、初めて上林に出会いました。『星を撒いた街』(夏葉社)は、私の夏葉社本ベスト1で大好きな1冊です。
故郷のゆかりの地の写真、短編小説が4編、作家案内、親族や作家が綴る上林のこと、全創作集案内、晩年に左手で書いた直筆原稿など。作家自身のことだけでなく、昭和の時代の小説家の生き方、私小説というジャンル、そういったことも感じ取れます。考えてみれば、夏葉社さんで庄野潤三や上林暁を読むまでは、私小説はほどんど読んだ事がなく、私小説へのイメージってあまり良くなかったのだけれど、自身に起きる身の回りの日常(たまには事件もありますが)をモチーフにそれを文章で表現し、それによって読者になにかが伝わるってすごいなぁ...と思うようになりました。
今回の本、なにより山本善行さんによる全創作集案内とあとがきが素晴らしかった。解説を読むと古書でしが手に入らないであろうその本を手に取ってみたくなるし、あとがきまで全て読み終えると、さらに作品が読みたくなります。たくさんの作家の作品を読んでいる山本さんが、こんなに推している作家なのだから良いに決まってます。上林を知らない方が読んでも、読後はきっと上林に興味がわきますよ、きっと。
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