最初はトンボの本なのかな?と思って読み始めたのですが、トンボの話からスタートし、日本人にとってのムシ文化論になっています。前半はトンボにまつわる人文学的な考察(比較文化論というのでしょうか)が続き、読むのを放棄しそうになりましたが、後半のゴケグモ騒動記、クモの喧嘩合戦の話あたりから面白くなってきました。
その他、俳句に出てくる昆虫や、江戸を中心とした近代の「ムシ」感、そして最後は現代の虫好き人間の多くが影響されたと思われるファーブルについての考察など。どうやら日本人は比較的ムシには寛容な民族のようですね。
読んでいると、日本人の自然感(実際はムシ感だと思うのですが...)というよりは、自分の自然感(ムシ感)についていろいろ考えさせられました。前半のアカトンボへの郷愁のあたりでは、自分のアカトンボ体験が頭の中をグルグルしました。
秋の運動会の季節に西からやってくるたくさんのつながりトンボや、秋の夕方に西向きのブロック塀にびっしり止まっているアカトンボ。虫かごが満杯になるぐらいにトンボを捕ったり、しっぽの先に糸を結びつけて(ときにはしっぽが途中から切れますけど)遊んだり。首が取れちゃったり、飛んでいかないように羽をわざとちぎったり、時にはカマキリにあげてみたり...ずいぶん殺生もしました。ちょっとやってみたくなるのですが、だんだんと後ろめたくなるのでやらなくなるんですよね。今となってみれば、そういう体験の中で命の大切さも学んだような気もします。
この本の最後のファーブルについての話も興味深く読みました。私は少年少女ファーブル昆虫記を読んだクチです。近年、岩波文庫で再販されたBoxセットを買いましたが、買ったまま本棚の肥やしとなっています。ファーブルの昆虫記が、自然科学というよりは文学的に面白いものだったようなので、いずれ大人向けの翻訳できちんと読んでみたいです。小説「すばる」には奥本大三郎先生訳の昆虫記(大人向け)が連載中だそうですが、これが出版されたら読みますよ...といっても終わるのはいつになるのでしょうねぇ。ファーブル昆虫記〈1〉 ふしぎなスカラベ 奥本 大三郎 集英社 1991-03 売り上げランキング : 29,208 おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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