島田潤一郎『長い読書』(みすず書房):読書修行僧。

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夏葉社の島田潤一郎さんの本『長い読書』が、このたびみすず書房から出版されました。みすず書房も好きな出版社さんなので、これはすごいことだと本を手にするのを心待ちにしていました。

表紙のクリムトの絵が素敵で、装幀も、使われているクリーム色の紙も、まさにみすずです。すごいなぁ。本や読書のことだけでなく、音楽のこと、マンガのこと、なかなか本が読めなかった頃のこと、学生時代、仕事のこと、子育てのこと…「本と生活」に関するものであり、これまでの集大成でもあるそうです。


出だしから本を読む話から始まりました。本を読んでもなかなか先に読み進まない話。島田さんが毎日継続的に時間を決めてコツコツと本を読んでいるという話は、先日の秋峰善さんの『夏葉社日記』で知りましたが、それは実は修業のようでもあるのでした。

のっけから共感&納得。私は電車通勤しなくなってから、意識して読書をするとなると、どうしても寝る前になるのですが、疲れているとすぐ寝落ちしてしまうやら、本の内容がなかなか頭に入ってこないやら、ページもなかなか進まず、今日もこれしか読めなかったと思いながら寝る…という毎日です。尊敬する読書大好きの故・米原万里さんが、1日に7〜8冊は読むという話を聞き(いや「読み」)、本を早く読める人ってうらやましいなと思っていました。でも少しずつ読み進むのだって読書。

「本を読むコツ」の章では、島田さんは「ときに耳をふさいで、川を渡り切るような気持ちをもたなければならないのだ」と書いてます。これで、長い本や難解な本も臆することなく読めるようになったそうです。あ、これも修業のようだなぁ。

How To本のような読書指南ではなく、読書エキスパートというわけではなく、フツーの読者と同じ立ち位置にいる島田さんがいて、その島田さんがそう言ってくれると、できるかもしれない気がしてきて、さっそくやってみたくなる。なにしろもともとあまり小説は読まなかった私が、前より小説を読むようになったきっかけは、何度もここで言っていますが、夏葉社さんの本のおかげです。読書で違う世界が広がりました。

「読書」の他にも、仕事や生活のこと、その中での本や小説のこと、いろんなエピソードがあり、読むヒトそれぞれに響くポイントがたくさんあると思います。

少し前のTwitterの時代、島田さんが『大菩薩峠』全20巻を読破したとのツイートを読んで、すごいなー、今あれを?と思っていたけれど、最後の章で読破のご事情を知りました。島田さん、まさに読書修行僧です。

この本を読んで、全国に読書修業をするヒトが増えると思いますし、もちろん私も修業に励もうと決意を新たにしました。(これ、ちょっと「紋切り型」ですか?)

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