「小津安二郎と戦争」

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4622071487小津安二郎と戦争
田中 眞澄


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戦後60年ということもあって、今年は太平洋戦争関係の本をいくつか読みました。

まずはこれ、太平洋戦争中、映画監督小津安二郎も招集されて戦争に行っていたのですが、同じ映画監督であった山中貞雄が戦地で病死後、彼が残したメモが発表されたことを機に、ずっと書いていた日記(こちらも出版されていますが未読)とは別に「禁公開」として書いていたメモの内容が収録されています。前半は小津と戦争についてのお話になっています。

小津は戦地にライカも持参して、兵隊さん達の日常的な様子をたくさん撮影していたそうですが、残念ながら松竹の火事でほとんどが焼失してしまったそうです。数枚だけ残された貴重な写真をみると、戦争というよりは兵隊さん達の日常が感じられます。

小津の残したメモはとても短いのですが、一人一人の人間としての兵隊さん達の様子が描かれていて、当然ですがそれがみんな普通の人達の集まりなのです。直接批判の言葉が並んでいるわけではないのにもかかわらず、かえって戦争の愚かさがひしひしと感じられました。そして、決して悲惨な描写があるわけではないのですが、妙な明るさ故に身につまされました。

普通の人達がこうして招集をうけて戦地に行って戦っていた...という事実は、頭ではわかってはいました。今回この小津の書いた陣中日記を読んで初めて、やっとそれがどんなことなのかわかったような気がしました。そのとたん涙が出てきて、自分でもびっくりです。

あんなことは今の日本ではあり得ないとは思うのですが、こういうことがあったという事実は、決して忘れてはいけないな...と実感させられた1冊でした。

全日記小津安二郎も読みたいのですが、amazonでは新刊は取り扱っていないようですし、ちょっと高いですね...。)

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このページは、raizoが2005年12月 9日に書いたブログ記事です。

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