タイトルから受ける印象で、いろいろな水族館が出てくるのかなと思っていたのですが、この本を手に取ってみると、表紙も挿絵(写真ではありません)も非常にクラシック。人間がいかにして海の生き物を地上に持ち出して鑑賞するようになったのか…という文化史的なお話です。
欧米が舞台の「歴史」ですから、東洋から来た文化として金魚をペットとして買うことから始まり、やがて普通の人たちがのぞき見ることのできない海底の世界の探求が進み、その成果として「アクアリウム」(海の水槽ですね)が人々に驚きをもって迎え入れられることとなり、本格的なブームが始まります。
お金持ちの個人の趣味から、やがてたくさんの水槽を並べて多くの人を集める娯楽施設となっていったこと。ガラスを使うようになって急速に広がってきたこと、魚の輸送、装置の工夫…
水槽の中でいかにして生かすか?ということなのかと思う実はそうでもなく、そこは貴族的趣味の発展だからなのか、商業的なことが優先されていたからなのか、おそらく生き物はどんどん死亡するけれど、どんどん供給して見た目の美しさを保ったと思われます。
今で言うところの生態展示といいますか、海の自然を小さな水槽の中に再現するという「美術品的」な捉え方もあったのでしょうね。
この本も「アクアリウム」というところから(原語はドイツ語だそうです)「水族館の歴史」というタイトルになったのかもしれませんが、ほんとうは「海水槽の歴史」というべき内容でございました。でも文化史として面白い本です。
いわゆる現代的な水族館のイメージのお話は巻末に本の少し。それも、たくさんの水族館や愛好家のために、多くの採集業者が林立し、いまやそれが生物の損失・環境の損失を招いていると結ばれています。そこは環境に関心の深いドイツ人らしい提言ですね。
さらに最後に補遺として「現在公開されている水族館とオセアナリウム(大きな海水槽)」という国別リストがあるのですが、日本では「かごしま水族館」「新江ノ島水族館」「海遊館」「沖縄ちゅら海水族館」の4つだけ。アメリカは18カ所も紹介されているのに妙に少ないです。あれ、日本は水族館大国のはずではなかったのかな。
コメントする