新刊をいつも楽しみにしている、吉祥寺の一人出版社、夏葉社さんの新しい本が出版されました。小島信夫の晩年の未収録短編集「ラヴ・レター」です。今回も、地元の古書ビビビさんで購入。
今回もすてきな装丁です。特にカバーをはずすと赤身を帯びた金文字と…
「はなぎれ」と言われる部分の金色がポイントになっております。
私は本を読むのは好きなのですが、小説は10冊に1冊ぐらいしか読まないぐらいに小説に疎いヒトであります。小説を読みたくないというわけではないのですが、ファンになった「夏葉社さんの本」を通して、普段だったら絶対に読まかったであろうと思われるタイプの小説に触れさせていただいています。
小島信夫氏の文章も、今回初めて読みました。そして1つめの「厳島詣」の頭からまず虚を突かれました。なんだ、なんだ?この老小説家(もちろん著者自身)と善久さんという人の電話の会話は?客観的なようでそうでもないような、でも小難しいところは全く無く、何かこう妙に力が適度に抜けていて、ちょっと初めての感覚です。
ちょっと重たい内容の部分もあるにはあるのだけれど、それがそのまま重たいのではなく、所々に妙に軽妙さも感じられて、これが小島信夫という人の「ユーモア」ということなのでしょうね。
一番印象に残ったのは、タイトルにもなっている「ラヴ・レター」でしょうか。これも奥様とのエピソードが中心ではあるものの、話の展開が不思議で、小島氏の頭の中での思考の展開がそのまま流れ出しているかのようです。仲間と車で熱海に行くお話(「浅き夢」)も面白かった。
そして、以前の小島氏の小説の話が文中に何度も出てくるものですから、その作品もどんなものなのかちょっと読んでみたくなる…というおまけ付でありました。
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