そう、今年のノーベル文学賞を受賞したスベトラーナ・アレクシエービッチさんの本です。チェルノブイリの原子力発電所の事故の影響を受けた人たちからの聞き書をまとめた話です。
ノンフィクションのようだから、これだったら私にも読めそうだなと思い、軽い気持ちで読み始めましたが、最初のエピソードでのっけからノックアウトされました。
いわゆる原爆症のような症状でご主人を亡くされた方のお話なのですが、どんなにご主人を愛していたかということが語られるのですが、その裏側にある事故…いや「放射能」の恐ろしさがリアルに伝わってくるようでした。
様々な「チェルノブイリの人たち」からの聞き書から成り立っている本書ですが、決して事故の様子や発電所がどうこうという話はほとんど出てきません。事故処理に駆り出された人たちや、放射能が高い地域に住んでいる人、住んでいた人、移り住んできた人、仕事で関わった人…などなど。
チェルノブイリについて、自分が全くわかっていなかったなと痛感せざるを得ませんでした。なんとなくはわかっていたけれど、実際の放射能の影響がこれほど深刻だったことに衝撃を受けました。何より子供たちの被害が深刻なことに心が痛みます。今その子供たちはどうしているのでしょう…。
今もなお、避難、病気や風評被害、喪失感など、様々な影響を受けながら暮らすチェルノブイリの人たち。放射能も怖いし、ロシアという国も、人間も怖いと思いました。
読んでいて、フクシマのことを考えずにはおられません。チェルノブイリほど事故が深刻でなかったとはいえ、様々な影響はまだまだずっと続くのです。
フクシマであのような事故があったからこそ、気を引き締めるためにも、この本ももっと広く読まれるべきではないか、そう言った意味でのノーベル文学賞だったのではないかと思いました。
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