アララギ第5巻第5号 その2
雜
たつ雲のこのたゝなはる我むねのいぶきに霧らふ花の灰色
淺間嶺のもゆる此胸行きふきて生ける諸々やきつくしてむ
うつそみのもののこと〳〵(くりかえし)冷ややかに見過ごす人といつゆなりしか
春の神よるをうまいのとばりとしとのひくかすみ山朧なり
底土の時計の緩みを朝寒のいさゝ氷れる不安に居るかな
鶯の聲より明くる東の媽祖にあさ日のかげみなぎれり
一よひの霜にかるべき非時の恵氏木の實そろかなしゑ
うつそみのあはれのこもる非常の木の實の芽組まうらさぶしも
春雨のそぼつを外に庭つとり女をあされり若草めぐむ
若草のつまとしをれは庭つとりいさゝ春雨そぼつもよけむ
宿痾未癒
たそかるゝ家内に一人病まもり立つこの春もうらさぶしかり
知らぬまに命をとらむ魔の神のたくみの病すぐなきものか
心やむも詮なきわざとをり〳〵(くりかえし)はかまへて氣をば張れりとはいへ
いきの息のこのうまし酒なげうたばうらぶれ心何にやるべき
渚邊にもゆる若草憂あるこゝろを知らにいや日けに肥ゆ
さく花にいそはふ鳥の心なく憂ある身をいやいたましむ
☆☆☆
本日は関東地方に春一番が吹く。
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