日本生態学会東北地区会編「生態学が語る東日本大震災 自然界に何が起きたのか」

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生態学が語る東日本大震災 自然界に何が起きたのか

毎年3月11日前後には、震災関連の書籍が出版されます。今年はだいぶ減ってきましたが、やっとこのような書籍も出てくるようになりました。日本生態学会がまとめた、東日本大震災に関連するフィールド研究の報告集です。

本の中では25の研究の内容が紹介されていますが、やはり干潟に関連したものの比率が高いです。地盤沈下や津波によって多くの干潟が消失しましたし、逆に湿地化し、かつての自然が一時的に復活したところもありました。自然の撹乱による生態系の変化ということですね。しかし、その後の防潮堤の工事では、生態学的にはそれを上回るような大きな影響が出そうです。

予想はしていましたが、多くの話の中で、津波による被害に加えて、防潮堤や盛土の工事が、生態系に大きく影響を与えると報告されています。そりゃそうですよ。現地では未だかつてないほどの大規模土木工事が三陸海岸の端からは端まで行われています。ここまでくると、安全のためには仕方がないとはいえ、どこまで必要なのかをどこかで考え直す必要もありそうです。

しかし、皆さん色々な研究をされているのだなと感心するほど色々な研究者がいらっしゃるのですね。泥の中にいる底生生物(ゴカイなど)や、浜に生息するハチ、海崖(ガケですね)の植物など、ニッチな研究もあります。皆さん地道に調査されていらっしゃる上、当然ながらその多くが震災前からフィールド調査を行っており、震災後との比較も行っています。

きっと今後研究を続けていくと、さらに工事の影響がはっきりしてくるのだと思います…が、可能であれば影響が出てくる前に、もう少しなんとかならないものかと思わざるを得ません。

東京にいると、こういったことは誰も心配していないのでは?と思うほど、危機感はほとんど伝わってきません。景観として防潮堤の高さを低くして欲しいというような話題は聞きますが、生態系にまで配慮した工事の話はほとんど聞きません。高度経済成長の頃の開発ラッシュとは時代が違うのですから、こういった書籍を出版することに加え、研究者の皆さんにももっと声をあげていただいて、もっと多くの人にこの問題に関心を持ってもらいたいと思いました。

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