海に囲まれた島国日本の漁業。明治期以降遠洋漁業が盛んになり、周辺国家との関係が大きく影響してきたという「国際漁業関係史」。北方領土、竹島、尖閣諸島、ロシア、中国、台湾、韓国、北朝鮮。こうやって並べただけでもやっかいな雰囲気。それぞれの国との漁業交渉や協定など、外交・かけ引き・民間レベルの交渉…それでも、どんどん日本の漁業者が追い込まれて行くのが辛いです。この本が書かれてから2年経ったけれど、状況が良くなったとは思えませんし。
漁業関係者でなければ、ほとんどの日本人はこの問題に関心を持つこともないのではと思うけれど、それでもこれまでの経緯を知ることができて良かったです。知らないことばかりでした。
この本の序章では、明治以降の日本の遠洋漁業の歴史が解説されているのですが、その中に明治の「オットセイ・ラッコ猟」の話が出てきました。使われていたラッコ猟の船の写真は、北上川河口に停泊していて、「柴山遠洋漁業」という会社の写真のようです。なんとこれ、石巻にあったラッコ猟をしていた会社でした。石巻でもラッコ猟をしていた話は知っていましたが、こんなところに話が出てくるとは…。
その後、詳しい方に柴山遠洋漁業について聞いた話では、社長の柴山英三さん、新潟県出身で、現在の東大水産学部を卒業し、岩手県の宮古にあった水産試験場に入ったのだけれど、日本近海でラッコ猟で儲けている欧米の船を見て、欧米に儲けさせてばかりはいられない、日本人が猟をすべきだと、岩手県をやめて石巻で会社を作ってラッコ猟で成功したという方でした。しかも、その後国際的にラッコ猟が禁止になり、政府からもらった補償金で、公共交通や石巻初の電力会社に出資するなど、なかなかすごい方だったようです。
この本の本筋とはだいぶそれてしまっているのですが、また1つ郷土史の勉強にもなりました。
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