イカの哲学 (集英社新書 (0430)) (集英社新書 (0430)) 中沢 新一 波多野 一郎 集英社 2008-02-15 by G-Tools |
結論から先に言ってしまうと、最近の一押しの「読むべき」新書だと思います。あれだけ売れた「生物と無生物のあいだ」よりも、断然良かったですっ!
何しろ新書ですから、タイトルだけ見ると自然科学系のトンデモ本か何かと思ってしまいますが、どちらかというと哲学のほうに近い内容です。でもイカはお話のなかで大きな役割も果たしています。
しかもそのイカは、日本近海のイカではなく、米国カリフォルニアのモントレー港で水揚げされたイカのことなのです。さらに言うと、波多野青年は、50年以上前のスタンフォード大学の学生で、大学のある「パロアルト」(今のアップル本社があるところですね)からモントレーにやってくるのです。パロアルトと聞いただけで読み始めから親近感がわいてしまいました。
「イカの哲学」は、下着のグンゼの創業者、波多野鶴吉の孫である波多野一郎が書き、1965年に刊行された本なのですが、その「イカの哲学」を全文再掲載し、本書の後半では、中沢新一がその内容を膨らませて平和学を説いたものです。
ですから、「イカの哲学」という奇妙なタイトルも、決して最近の編集者がウケを狙ってつけたものではないのです。
平和学などどいうとちょっと鼻につくような響きですが、本編の「イカの哲学」も分かりやすくて素晴らしい文章でした。ある種哲学というものは、それまでの様々な自分の体験(この場合は主に戦争体験)を糧として、ふとした時に頭の中にひらめくものなのですね。そのひらめきの元が「イカ」だったのでした。
後半の中沢氏の話も思っていたより小難しくなく、なるほどと思わせる内容もあり、一気に読むことができました。(つまらないと読むのに時間がかかるタイプなので...)
人間と、イカをはじめとする他の生物との決定的違いも、わかっているようで分かっていなかったような気がします。(それが何なのかは読んでのお楽しみ?)
そして、読み終わってみて、これからの世界の「超平和」を祈りつつ、ちょっぴりイカ達のことを想ってみたりしています。
一緒に買ったのはソニー・マガジンズから出た新しい新書のうちの1冊。こちらは正真正銘の自然科学系の蝶の本デス!蝶の道 (ソニー・マガジンズ新書 9) 南 孝彦 ソニー・マガジンズ 2008-03 by G-Tools |
細かいところに反応してしまって恐縮なんですが、Apple 本社は Palo Alto ではなくて Cupertino にあります。すぐ近くですけどね。Steve Jobs は Palo Alto に住んでるとか。