上野千鶴子・辻元清美「世代間連帯」

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世代間連帯 (岩波新書)世代間連帯 (岩波新書)

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この2人の「連帯」ってどのようなことなんだろう?対談というかたちをとることは多少お手軽では?とも思ったのですが、内容としては充分濃い内容になっており、私にとっては久々の岩波新書のアタリでした。

今も売れているこちらよりは面白かったですよ。
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上野千鶴子の「おひとりさまの老後」は、くみこさん(母)から読みたいとリクエストがあったので、実は私も読みました。その方法が画期的だ!とは思わなかったけれど、今までの概念で「老後」を考えていてはいけないということは感じました。

そんな上野さんの思わぬベストセラー本もベースにしながら、お二人が「仕事、住まい」「家族、子ども、教育」「医療、介護、年金」「税金、経済、社会連帯」について意見を交換しています。目立って「ジェンダー」な話が飛び交っているわけではありませんので、男性の方でも入っていけると思います。本のタイトルは、上野さんの世代と、辻元さんの間の世代のギャップを指すようですが、社会学者と市民活動家出身の政治家という立場の違いは感じたものの、それほど世代のギャップのあるようには感じませんでした。

この対談の中で、少子化の問題以前に、婚姻率の低下、婚外出生率の低さも問題にするべきだとありました。特に東京にいると感じますが、独身率はどんどん高くなっています。少子化問題以外でも、社会のしくみが、結婚して、奥様が専業主婦で、2人ぐらい子どもを作って、そして老後を迎える...といったパターンを「標準モデル」として作られていることを、この本を読んであらためて実感しました。

すべての項目において感じたのは、とにかく今までの観念でそれぞれを継続していくのは、やはり無理があり、このあたりで発想の転換が必要なのだということ。お二人の意見すべてが正しいわけではないと思いますが、やはりおじさま達(多くの政治家のみなさんや、官僚と言われる方々のことです。おじさまととは限らない場合もありますが...)の保守的発想を転換する時期が来ているのではないでしょうか。民主党政権になったことも、よいチャンスではないかと。

若い世代が高齢者を支える社会は、日本においてはもう無理ではないかと思います。けっこうな割合で若者にも定職がないわけですから。へたすると年金生活者の方が裕福だったりしますし。難しいとは思いますが、多様性のある社会を前提として、社会の仕組を考え直す時期が来ているのでしょう。

個人的には、狭い日本でもありますし、人口が増え続けるということはありえませんから、今後はどんどん国が縮小していくぐらいの想定で、シュミレーションしていただいたほうがいいかもしれない。それでも成り立つ国家にしてもらわないと、我々も老後云々どころじゃなくなりますよ。

ということで、久々に「社会のしくみ」についていろいろと考えさせられる1冊でした。

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このページは、raizoが2009年12月11日に書いたブログ記事です。

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