「ハーブ&ドロシー」に続き、再びシアター・イメージフォーラムに行き、映画「フード・インク」を観てきました。アメリカの巨大農業産業のドキュメンタリー映画で、アメリカ本国ではその衝撃的な内容でかなりの反響があり、興行的にも成功した映画だそうです。
やはり同じ映画館で観た「いのちの食べかた」に、テーマが似通っているようにも思えますが、あちらはヨーロッパ的に静かに警鐘を鳴らすような内容でした。しかしこちらはさすがアメリカ製。相手にしているのも世界最大の農業産業ですから、内容の衝撃度も格段上ですし、批判もストレートで痛烈でした。
いまやアメリカの農業は、かつての農家のイメージとは全く違うのです…というところから話が始まりました。出てくるのは、牛肉・豚肉・鶏肉・トウモロコシ・大豆…と、農業大国アメリカを象徴する農業品目です。
なんとなくは知っていたけれど、農場ばかりでなく、それぞれの関連施設の規模の大きさには驚くばかり。産業として成り立たせるために、いろいろな意味で徹底した大規模化・効率化を図っていて、コストカットも徹底しているわけです。牛・豚・鶏はもとより、その加工場で働く労働者さえもモノとして扱われていると映画は訴えます。こうなるともう「工業製品」ですね、これは。
かつては、国家戦略として、生産性向上を目指して公的機関が行っていた品種改良も、いまやビジネスの1つとして、企業が競って行うものになっています。畜産に関する部分では、衝撃という程ではなかったのですが、個人的には遺伝子組み換え大豆の話が衝撃的でした。今や育種も特許にガチガチに守られたものすごい産業と化しているということです。アメリカはそいういった企業がしっかりロビー活動をしますから、政府の後ろ盾もあったりするんですよね。
「遺伝子組み換え大豆」のことは、よく話には出てきますが、遺伝子を組み換えて収量の高い品種を作っただけのことだと思っていました。この映画に登場するのは除草剤耐性の品種で、その品種を生産する農家は、その種子の取り扱いを厳重に管理されているとのこと。契約に違反すれば、もう栽培はできなくなってしまうのはもちろんのこと、訴訟も起こされてしまいます。いやいや大変な時代になったものです。
遺伝子組み換え種子の話の当事者であるモンサント社の、この映画に関する見解も出ています。
映画「フード・インク(Food,inc)」に関する見解 | モンサント・カンパニーの見解 | 資料室 | 日本モンサント株式会社
遺伝子を組み換えたような大豆が本当に大丈夫なのか?という根本的な不安もあるでしょうが、除草剤耐性の大豆ということは、除草剤をガンガンまいて育てていることですよね。だって、モンサントは除草剤も売ってますから。除草剤とセットのタネですよ。ある意味すごいアイディアです。しかしそれが安全な食品と言えるのかと考えると、やはり不安になります。
最後は、地元の安全な食材(時には家庭菜園)や旬の食材を選んだりすることで自衛するという話で終わります。もっと消費者が賢くなれば良いと。でも、それはある程度の収入があればできることであって、全ての人ができることではありません。私だって、収入が無かったら、オーガニックの野菜なんて言っていられないと思います。安さをとるか、安全をとるかということですね。
生み出される食品の安全性は別として、こんな巨大産業に対して、日本の農業は真っ向勝負ではとうてい太刀打ちできないと思います。TPPの話の中で、日本も付加価値の高い農業を目指さないと生き残れない、という話を最近良く聞きますが、まさにこの映画の言わんとするところがヒントになるのではないかとも思いました。とても難しいことだとは思いますが、ここは農業政策として何かひとひねり考えてもらいたいですし、多くの日本の消費者にも、もっと食の安全を頭に置いて、賢くお買い物をして欲しいと思いました。
しかし…この映画を観てしまうと、しばらくはマクドナルドでは食べる気がしないなぁ。牛肉のパテはアンモニアで消毒しているんだそうですよ。うぇ縲怐B
※私よりもよっぽど詳しいレビューはこちら。
今週末見るべき映画「フード・インク」|イズムコンシェルジュ
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