この新書は、2010年2月のチリ沖地震の津波の際、津波警報が出たにも関わらず、多くの人が避難をしなかったという危機感から書かれたものだそうです。「こんなことではとんでもないことになる」という思いが現実になってしまった訳です。
内容は、「津波の恐ろしさ」から始まり、津波のメカニズム、繰り返される津波災害のこと、津波情報への注意、来たらどうするか、津波災害への備え…といったものです。
読み進むほど、その指摘が当たっている箇所が多く、もっと多くの人達がこの本に書かれている内容を知っていたら、被害の結果も少し違ってきたのではないかと思う程。しかし、今後に備えるという意味で、沿岸部に住む方、住んでいなくとも、訪れる可能性のある方は、読んでおいて損はないと思います。
立っていられないほどの揺れが1分以上続いたら、まず津波が来るということ。警報には頼らず、自分の判断で避難することが大切だそうです。あの大きな揺れで、いち早く避難して助かった方の話も聞きます。警報は聞こえなかったという話もよく聞きましたし。とにかく逃げるの一言ですね。
避難は原則徒歩で。奥尻島の津波災害以降、車による避難は避けるべきだということになっていたようですが、それもどこまで一般市民に伝わっていたのでしょう。今回も各地で避難渋滞も起きました。
みんながこの本を読む…というよりは、本来はこのようなことを、津波災害の起きやすい地方では、もっと徹底して教育していく必要がありますね。これは著者の方もおっしゃっていることです。
「水は昔を覚えている」という言葉も印象的です。昔、海や湿地帯だったところに市街地が発達しても、洪水・高潮・津波などの水害によって昔に戻ってしまうという意味だそうです。今回の震災でも、都心の液状化現象による被害も含め、まさにその通りになりました。東京もうかうかしていられませんよ。
また、今後の復興へのヒントもあります。釜石では、多額の工事費をかけて作った防波堤に投資したけれど、人口減少や地域の活性化には貢献できていないこと。奥尻島では、高台移転し、港もかさ上げして整備したにも関わらず、結局人口が流出してしまい、活気が見られないこと。被害の大きかった青苗地区には、津波館と津波慰霊碑しかないそうですが、やはり人が集まらないところは寂しくなるのは当然です。
多くの被災地で、何とか少しでも夢のある復興計画ができると良いのですが…
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