先日の石巻ブックエイドのイベントの1つとして、2日目の一箱古本市表彰式のあとに「本のコミュニティスペースをつくる」というシンポジウムがあり、そのまま同じ会場に残って参加してきました。
震災後の東松島市図書館の取り組み、かめ七さんのコミかめ の話、アイトピアを中心とした商店街の話などが中心でした。
石巻旧市内中心部の本屋さん、ピーク時には5軒あった(そういう時代に暮らしていたのは幸せだったのですねぇ)のに、震災の前にすでに1軒も無くなってしまっていました。
進行役のナンダロウさんがそれぞれの書店に特徴はあったのですか?という問いに、やはり名前が出てきたのは「耽書房」さん。一番小さかったけれど、実は一番個性的だったのかなぁ。その後も何度か名前がでてきました。アイトピア通りの皆さんにとっては、やはり本屋さんといえば「耽書房」ですよね。ちょっとマニアックな雑誌は、私もいつも耽書房で買っていました。レジ横のイスに座って、耽書房のおばさんと話し込んでいる常連さんもよく見かけましたし。
その耽書房さんは、雑誌の種類が特に豊富。金港堂は総合的で、商店街では一番利用した本屋さん(本当の一番は、マンガ雑誌を買っていた近所のささき書店)だったけれど、参考書は必ずこここで買ってました。ヤマト屋さんは、高山ができるまでは家から一番遠かったので、店構えや店の中はよく覚えているのだけれど、あまり買い物しなかったかも。最後に石巻に進出した高山書店は、特にマンガが充実していました。いやぁ、本屋さん、ずいぶんあったなぁ。
あ、ローカルな話ですみません。
そんな、本屋さんの無い商店街における「本のコミュニティースペース」の可能性は果たしてあるのでしょうか?進行役のナンダロウさんも話しておられましたが、やはり新たに新刊書店を作って経営するのは難しいだろうとのこと。であれば、お店の一角に本を置いてみてはどうでしょうという提案もありました。でも萬画館の漫画がダメなら「本」だとばかりに、とってつけたようなこともやりにくいでしょうね。
これまで、漫画でまちおこしのはずなのに、駅から萬画館に行くまでのみちみちに、漫画を買える本屋さんが1軒も無いというところからして、そもそもどこか間違っていると思っていました。萬画館に訪れる人をおもてなしする気持ちがあるなら、せめて石ノ森章太郎作品ぐらい買えるようにしても良かったのでは…。(私の知る限り、萬画館のギフトショップではマンガは買えなかったように思います)
あんまりなので、萬画館の近くで石ノ森章太郎漫画+トキワ荘系な漫画家に特化した古本屋でも…と考えたこともありましたが、いかんせん私は手塚派で、実は石ノ森作品はほとんど読んだことが無く、もっぱらTVのキャラクターしか知らないという知識の浅さなので、妄想に終わっております。
まあそれはそれとして。本当は本屋さんがあるのが本好きにとっては一番だけれど、それが無理ならば、本屋はないけど本のある商店街構想…もとい妄想をしてみました。
呉服屋さんには和の本、酒屋さんにはお酒の本、洋品店には婦人雑誌、薬局には健康本、陶器店は器の本、食べ物屋さんでは食の本…など、商店街全体が本屋さんになるなんてどうでしょうねぇ。本好きでも無いと、いきなり本を売れってったって難しいけれど、自分の商売のジャンルだったら知識もあるし、そこはプロっぽい本でもいいと思うんですよね。無理に文学をおすすめしてもらう必要なし。好きな方はおすすめいただいても良し。団体戦です。これ妄想ですよあくまで。そんなことで簡単にお客が集まるほど商売は甘くないことはわかっております。
今回初めて一箱店主をして感じたのは、お客様とコミュニケーションを取りながら売るということが、ことのほか楽しかったこと。そういうことに好き嫌いはありますから、ドライなほうがいい方もいるでしょう。でも歳を取ったせいか、買う側としても、そういうコミュニケーションそのものが楽しいと感じることが増えています。商店ではそれが強みの1つでもあります。
大きくて何でもある本屋さんもいいけれど、品揃えが自分の好みにあえば、小さい本屋さんでも楽しく過ごせます。お店の人と親しく話すというのは気恥ずかしいくせに、覚えてもらって声をかけてもらうとうれしかったりするのです。
それは普通のお買い物にも言えることです。知らないお店でも、お店の方と会話が弾むと楽しい気持ちになります。素敵なお店は小さくてもステキ。遠くにあってもわざわざ出向いてでも行きます。また来たいと思わせるサービスってなかなか難しいのですが、石巻の町にも、また行きたいと思うお店、どんどん増えて欲しいですね。それに、近隣にお店が無くなって不便になった地域もあるわけですから、商店街が利用しやすくなるような工夫もしていただけるといいなぁ。
ブックエイドの日は、仮設住宅や被災住宅、女川や南三陸町から来た方もいらっしゃいました。お金をいただいてもいいのだろうかという気持ちもよぎりましたが、不思議と値切る人は1人もいませんでした。客数で言えば少なかったかもしれないし、街のほんの一角でのことだけれど、みんな純粋にお買い物を楽しんでくれていたように思います。
…そんなふうに買い物を楽しめる街、さらに本好きとしては本にも親しめる街になればなおいいんですけどね。
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