そんな市川さんの、郡山に期限付きで引越しをしたのをきっかけに、東北の古くから伝わる普通のおやつをめぐる旅のお話です。
とにかく市川さんのお人柄をしのばせるような、なんとも静かな文調で旅は進んで行きます。
写真は一切無く、出会ったおやつ(お菓子)のことも、訪ねた町やヒトの様子も、市川さんの文章だけを頼りに、頭の中で想像しながら読み進むことになります。これが読後に感じるやわらかい不思議な感覚につながっているのかもしれません。
古くから伝わるお菓子や、ローカルなおやつをたずねるなかで、地元の人たちの様子も伝わってきます。読んでいると、特に地元のおばちゃん達の元気な姿が目に浮かんでくるようでした。でてくるお菓子やその周辺をめぐる日常や生活に思いを馳せると、また東北ノスタルジックな気持ちになってしまい、なんだかとてても心に染みるのです。
食がテーマではあるけれど、まさに紀行文。一緒に旅をしているような気持ちになれました。そして出てくるおやつも食べたくなります。読んでいてほんとうに心地良い本でした。これは私が和菓子好きというのもありますが、ほんとにオススメです。
ちなみに「海沿いの町のおやつ」として女川縲恊ホ巻編もありまして、「茶きん」や「がんづき」(ねっとりタイプ)が登場します。ゆべしは地域限定的なものだとは知っていたのですが、茶きんも他にないものだったことは、最近になって知りました。
この本の中で、すでに売り切れてしまっていたのは、おそらく「佐藤ちゃきん屋」さん。湊にあったお店は無くなってしまいましたが、復興ふれあい商店街で営業中です。タイミングがよければ、クレープみたいに生地を焼いているところも見られますし、できたても食べられます!
現在の様子はこちらのブログに紹介されています!
復興ふれあい商店街「ちゃきんのさとう」さん|Light(ライト)石巻 のブログ
ちゃきんは1つ60円で売りきれごめん。
「がんづき」は、石巻のあたりではねっとりしたタイプが主流。ういろうとかゆべしみたいなものです。私がよくみかけたのは、市内の和菓子屋さんのガラスケースの中で、トレーにのっている平たい白いものと茶色いもの。食べやすい大きさにカットして売られています。上にのっているのはくるみ。
でも最近はそういった小さな和菓子屋さんが少なくなってしまいました。津波で被害のあった地域では閉店してしまったところが多いのです。もっと早くにあちこち行っておけば良かったなぁ…とちょっと後悔しています。
でもまだまだ頑張っているお菓子屋さんもたくさんあります。石巻においでの際は、ローカルスイーツも是非お試し下さいませ。
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