三船敏郎の「酔いどれ天使」での演技はほんとうにかっこいいし、「七人の侍」の菊千代も大好き、「静かなる決闘」での外科医も、「用心棒」や「椿三十郎」の刀さばきも魅力ですし、「隠し砦の三悪人」の寡黙な謎の武士っぷりも良し。
そんな三船敏郎の晩年は、離婚騒動や三船プロのゴタゴタなど、最後まであまり良いイメージの無いまま、寂しくこの世を去ってしまった印象がありました。
あらためてこの評伝を読み、彼の人生において太平洋戦争での体験が大きく影響していたことを知りました。彼自身は家業の写真屋さんの腕を買われ、航空隊にいながら最後まで直接戦地に飛ぶことなく、特攻隊の少年たちを送る立場で終戦を迎えたのだそうです。もちろんそれは軍隊での生活も含めてつらい体験として、彼の生き方に大きく影響したようです。
そして、飛行機乗りとしても発揮されていたずば抜けた身体能力を、俳優業でもいかんなく発揮して、吹き替えなしで、殺陣や乗馬アクションをこなしていたのだとか。あの殺陣はやはり並大抵のものではなかったのです。ううむ、「用心棒」がまた見たくなってきましたよ。
潔癖症でお掃除好きの話は聞いたことがありましたので、驚きはしませんでしたが、三船プロの内側の話や、離婚騒動の裏側、愛人との関係や晩年の話など、びっくりというよりは、いろいろあって大変でしたね…という気持ちの方が大きくなりました。大スターであることは寂しいことでもありますね。
酒に酔って暴れたりすることがあっても、実は気遣いの人でもあり、なにより世界の映画人に尊敬されています。日本では演技とは違うところで目立ってしまい、俳優としての評価が少し低くなってしまっているようで残念です。この本の出版を期に、再評価されるといいなと思っております。
そして筆者の松田さんも書いていましたが、東宝には、松竹の小津安二郎 生誕 110年事業レベルの「ニューデジタルリマスター版」の制作をお願いしたいところです。まさに「世界遺産」だと思いますので、貴重な財産を後世に残して下さい。
そして…次は、続けてこちらを読んでいるところ。三船編ではネタ元が同じなので、話が若干かぶっておりました。
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