高槻 成紀「シカ問題を考える バランスを崩した自然の行方」

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シカ問題、つまりニホンジカが増えすぎ、日本のあちこちで被害が出ている問題のことなのですが、前から関心があるので、関連した本をこれまで何冊か読んできました。

しかし、著者の高槻先生が冒頭で書かれている通り、どちらかというと研究発表的な難しいものばかりでした。そんな中で、長年シカと植物の関係を研究されてきた高槻先生が、一般の読者向けに書いた新書です。

シカの被害…と言うと、農作物への被害を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実際はもっとグローバルに森林・山地の植物への被害が深刻になっています。

急増するシカの話で真っ先に出てくるのは、今や石巻市内ということになった金華山のシカの話。現在あの小さな島に400頭のシカがおり、これはかなりの高密度なのだそうです。そのため、慢性的なエサ不足で、島の植生にも大きな影響を与えています。

農作物への被害はわかりやすいですが、森林の植物への影響は、都市部に住んでいる私たちには日頃目にすることがないだけに、日本全国そんなことになっているとはと思うほどのもの。先生は「森を食べ尽くす」とまで書かれています。植物に影響が出ると、森に住む他の昆虫や動植物にも影響が広がるというわけです。

後半は、なぜこれほどまでにシカが増えてしまったのか、原因と思われることを1つ1つ考察していくのですが、諸説あるもののズバリの正解は浮かんできません。それは複合的な要素もあるからですが、最終的には日本の農村社会の崩壊が招いたことなのではという結論に達しています。

最近よく感じるのですが、それはシカ問題のような自然環境だけに留まらないような気がしています。文化的な面でも、都市化と都市への集中は、様々なものを消滅させているように思うのですが、それは時代の流れで仕方ないと割り切れるのかということですね。シカ問題はそれですまされるのでしょうか…。

本の途中では「シカ」という動物の解説もあり、一般向けとして普通の方(自分はもうあまり普通ではないので)にも興味のを持ってもらえる本だと思いました。もちろん私も大変勉強になりました。シカ問題に少しでも興味のある方は是非!

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このページは、raizoが2016年1月22日に書いたブログ記事です。

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