事前に島尾敏雄の「死の棘」は読んでおきました。読んだことがありませんでしたので。そもそも死の棘に出てくるミホさんが怖かった。夫婦の、いや島尾一家のドロドロした日々に直面し、読んでいる自分が複雑な気持ちになりました。
そしてこの評伝へ。表紙のミホさんの若い頃の写真が使われていますが、私はこれもなんだか怖くてカバーをかけて読みました。
著者が、まだご存命の島尾ミホさんを取材した話から始まり、ミホさんの生い立ちから亡くまるまで、小説「死の棘」に書かれた時期を中心に、小説に書かれたこと、書かれなかったことを、島尾家の遺品から見つけた新発見の資料も含めた調査によってまとめられています。(しかも巻末に「死の棘」のあらすじつき)
「死の棘」では、敏雄とミホの出会いやこれまでの生活もわからないまま突然修羅場になるわけですが、(島尾敏雄の他の私小説も読んでいませんでしたので)これを読むと、より深く「死の棘」そして島尾敏雄夫妻の素顔が理解できるような内容になっていると思います。
それでいても、やっぱりこの評伝の中のミホさんは、私にとっては怖かった。タイトル通り「狂うひと」として怖いのではなく、なんとも浮世離れして神秘的なところが怖いのかもしれません。私はこういうタイプの人とはきっとおつきあいできないだろうなと思いました。
でもこういった描き方(評伝の)は、女性でないとできなかった思うし、私も同性だからこそミホさんを「怖い」と感じるのかもしれません。
怖い怖い言いながらも、ミホさんのエッセイ集も買ってしまいました。この評伝の記憶が新たなうちにゆっくり読むとしますか。
コメントする