赤嶺淳「鯨を生きる: 鯨人の個人史・鯨食の同時代史」聞き書きは鮎川の鯨人がトップバッター

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鯨とともに生きてきた「鯨人(くじらびと)」6人の聞き書きと、捕鯨と鯨食文化の変遷をまとめた本です。出版案内か何かで見かけてちょっと気になるなと思っていたのですが、先日仙台のブックオフで見つけました。普通の本屋さんでもなかなか売っていない本ですね。

聞き書きのトップバッターは、鮎川(石巻市)の方。語り口がそのまま書き起こされているので、宮城県の方言での記述です。amazonのレビューでは違和感があると書かれていますが、私は逆で違和感なく入り込めてしまいました。(笑)

鮎川在住の方が2名、あとは西の方ばかりで、福岡で鯨肉を扱っている方や、大阪で鯨料理屋さんをされている方などが登場しました。鯨食文化としては西の方が盛んだったのですね。知りませんでした。でも捕鯨の盛んな地域として有名な大知の方は登場しませんでした。

聞き書きの中にも、捕鯨の変遷がわかる話が出てきますし、本の後半には近年の捕鯨の歴史もまとめられています。私は同級生にお父さんが大洋漁業(マルハですね)で捕鯨船に乗っているという子もいましたし、学校の玄関を入ったところには捕鯨の銛(平銛)が飾られていましたし、理科室には大洋漁業から寄付されたと聞いていた、鯨の胎児のホルマリン漬けがあったのも覚えています。そんなこともあり、やはり捕鯨の町、鮎川が近かった(市町村合併前は石巻市ではありませんでしたから)ということもあり、捕鯨問題については前から関心もあります。

ただ、また捕鯨が再開できたとしても、以前のように儲かる漁にはならないような気がしますので、国際的な最近の流れはもう仕方ないと思います。そういった意味でも、捕鯨に関わった方達の話を記録しておくことは重要ですね。今やっておかないと証言できる方達がいなくなってしまいますし。

パラパラ本をめくった時、巻末にオランウータンの写真が掲載されていて、どうして鯨本にオランウータン?と不思議に思ったのですが、読んでみますと、捕鯨禁止でパーム油の需要がますます高まり、オランウータンの住む森が消えてパーム林になってしまったという、クジラの自然保護がオランウータンを絶滅に追いやっているという考えもあるようです。なるほど、そこまでは考えたことなかったなぁ。

そして結構「大洋ホエールズ」(プロ野球。現在の横浜ベイスターズ)を応援した話が出てきました。そうですよ、大洋漁業が球団を持っていたのですから、すごい時代でした。チーム名だってホエールズですよ。そりゃ捕鯨関係者は応援しますよねぇ。

てな具合に、捕鯨の歴史や技術についての本は多々ありますが、鯨人に焦点を当てた本として、ありそうでなかった切り口ではないでしょうか。

(この著者のナマコの本も、ちょっと面白そうです。)

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