主に中東を中心とした地域の、マイナーな宗教を取り上げたノンフィクションであります。
日本人のイメージとして、中東はイスラエルを除けば、みんなイスラム教系の人ばかりという印象ですが、イスラム教の歴史は1400年。キリスト教は2000年。あとから出て来たイスラム教に改宗する人たちが増えて現在に至るのですが、その前はキリスト教であったり、さらに紀元前から続く古い宗教であったりするわけです。
登場するのは、マンタ教、ゾロアスター教、ドゥローズ派(イスラーム)、サマリア人(ユダヤ)、コプト教(東方教会)、カラーシャ族の7つ。
正直言って難しくて何度も寝落ちしながら読みましたが、1つ1つの宗教を理解できたわけではないけれど、理解することが重要なのではなく、そういった宗教を生きる人々がまだ残ってはいるけれど、失われつつあるのだという現実を知ることが本題だろうと思います。
宗教の話ではあるけれど、それはもう文化であり、民族の話のようでもありました。それぞれの宗教の解説は、日本の研究者の方が寄せた解説が各2ぺーじ程度付いているだけで、本編は説明的なところ少なく、著者が体験したことが本の形になっているので、まさにノンフィクションなのでした。
エジプト、イラン、イラク、シリア、パレスチナ、パキスタンなどが主な舞台で、著者は実際にそれぞれの現地を訪ねるわけですが、隠れて住んでいるような人たちもいて、そう簡単に行けるところではないところばかり。著者の取材のおかげて、実際の儀式や習慣、現在の地域の中での立ち位置などを、読んでいる私たちも知ることができるわけで、その取材力には驚かされます。
イスラム教・キリスト教・ユダヤ教との関係や、少数になったことによる迫害、若者の宗教離れなど、状況はどのマイナー宗教も同じのようですが、失われる前にこうやって本の形になることで、私のような者にまで伝わる訳です。
取り上げられていたのは、紀元前から続く古い宗教も多く、もう3000年、4000年続いているのかと思うとすごいことですね。もう歴史です。今の中東情勢を考える上でも、良い勉強になります。イスラム教がいかに勢力を拡大して来たかを実感できました。一種破壊的なところもありますね。最後はそういった印象で読了しました。
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