「石ノ森章太郎のマンガ家入門」

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今年は石ノ森章太郎生誕80年。石ノ森先生の作品の中で、実は一番影響力があったのではないかというのがこちらのマンガ家入門。もともとは単行本で、正・続の2冊刊行されていましたが、1988年に内容を改めて合本して単行本で発行され、1998年に文庫化されまし。この本に影響された、この本を読んで漫画家を目指した…という方々がたくさんいらっしゃいます。でも私は手塚治虫派だったので、手塚先生の「マンガの描き方」は読んだのですが、石ノ森先生のこちらは読んだことがありませんでした。

石巻市図書館に行ったおり、児童書のコーナー(!)にこの本(単行本の方です)があったので、これは…と思い借りてきました。


いやいや、この本に影響された漫画家さんが多いことに納得しました。テクニックの説明ではない、読ませる内容というのでしょうか、解説が漫画論的で石ノ森先生の考えがガッチリと書かれています。「龍神沼」のマンガがそのまま掲載されていて、マンガのストーリーに沿って惜しみなく「こうやってストーリー作り、こんなテクニックを使って描いたのだ」という懇切丁寧な解説がついていて驚きました。聞いてはいたのですが。

「マンガ家入門」というタイトルではあるけれど、解説の文章に先生の考えがあちこちに出てきますので、「石ノ森章太郎のマンガ論」とも言えます。私はどうも石ノ森章太郎は手塚先生の亜流的なイメージがずっとあって、なんだか面白味がないとずっと思い込んできたのですが、逆に手塚先生はこれほどマンガについて考えていたのだろうかと思うほど、マンガに対する考えがしっかりされていて深いものでありました。これを児童書コーナーに置いておくのも勿体無いです。(図書館にあるだけまだ良い方だとは思いますが。)

入門編では先生自身の自己紹介を通して、マンガ家生活の紹介とマンガに対する考えを述べ、テクニック編では、絵の描き方の具体的方法というよりは、主にアイディアやストーリの作り方・構成、効果的な描き方のような「テクニック」の説明が中心です。

今はマンガもデジタルで描く時代となりましたが、この本の内容はデジタルであっても変わらない根幹的なことが解説されていて、その内容は実はそれほど古びていないのかもしれません。

石ノ森先生、すごいなぁ。手塚先生も天才的ではあったけれど、石ノ森先生も現在に続くマンガ界に多大な影響を与えて来た人物であったことに違いなく、それに今頃気づいている私ですが、生誕80周年のこの機会に気づくことができただけでも良かったです。

うちのベランダから見える(といっても今近くで建設中の12階建マンションが完成するとおそらく見えなくなりますが…)石ノ森萬画館も、街に合わない変な建物だなとずっと思っていたけれど、最近は好感が持てるようになりました。不思議なものですね。

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このページは、raizoが2018年10月15日に書いたブログ記事です。

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