夏葉社さんの別レーベル、岬書店の新刊は、現在福岡在住の書店員さん、松岡千恵さんの『短篇集 ヘンルーダ』。
表紙の絵は、ちょっと夜のような暗い雰囲気ではあるのだけれど、描かれた女の子がなにかを象徴的しているような…。で、ふと調べてみたら、ヘンルーダってミカン科の植物の名前でした。この黄色い花はヘンルーダの花だったのか!
ということで前半は書店員エッセイ風な短編からスタート。書店員あるある…というよりは、書店という職場をめぐるいろんな人のお話でした。出てくる人がなんだかみんな一風変わっていて、本当のような本当の話ではないような、なんだか不思議な雰囲気がしました。
そして後半はいろんな「家族」にまつわるお話。これまたさらに不思議なお話ばかり。こちらはもう完全にフィクションだと思うのだけれど、お話を読んでいて私の頭に浮かぶのは、どうもちょっと古くさい昭和の雰囲気。とはいえ、読んでいるともう少し最近の世相を反映するモノが出てくるので、そこでハッとして、それほど昔じゃないんだよ、昭和の終わりだこのお話は…と思い直して読み進むというのを繰り返してました。
奥付をみると1981年生まれなので、ぎりぎり昭和ぐらいの方なのですね。女の子が主人公というお話が多いので、ついつい自分に重ねて読んでいると、昭和をさらに少しさかのぼってしまうようです。よくよく読めば、松岡さんの世代の世界なんだなとわかるのですが。
中には昔語りみたいな話もあるのだけれど、「八甲田山氏の彷徨」なんて、ちょっと古くさくない?…なんて、どうも時代考証もしたくなる。やっぱり不思議な感覚の短篇集でした。
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