これも毎回恒例となってきましたが、昨日の不忍ブックストリート第18回一箱古本市の振り返りでございます。
さて、実は大好きな「へび道」沿いの出店ということに決まり、もともと東京本の一部として出すつもりだった地形本をもっと充実させたかったのですが、いかんせん思うように本が揃わず、代わりに一時期ハマった坂道&古地図散歩本を蔵出しして追加したため、出品本が直前に増えてしまいました。
前の日の夜にパッキングしたものの、あまりの重たさに何冊か減らしたのですが焼け石に水。2年連続の重量にカートに荷物を固定するゴムまで1本切れてしまい、不安な出だしであります。気合いでカートを引っ張り、電車のドアの段差を何度か乗り越えて千駄木駅に到着。駅のエレベーターでは、同じ出店場所の書肆ヘルニアさんはじめ、明らかに出展者と思われる大荷物の方々と同乗。駅から程近い特養老人ホーム谷中さんに到着です。
助っ人さんから、台東区立という自治体施設らしい「食事禁止」というこの場所特有の条件の説明を受け、ジャンケンで順番に場所決めです。私は「多摩や」さんと「あまりもの」さんの間、目の前に「書肆ヘルニアさん」という場所に陣取り、慌ただしく出店準備。出だしはこんな状態でスタートいたしました。
前にご紹介した規定ぴったりサイズの自作の箱(しかし一部本が箱からはみ出てますな)の上蓋は、下をダンボールの筒2本でつっかえ棒にして支えており、追加本は影に積んであります。
曇り予想の天気予報が、思いのほか日差しがありましたが、雨が降るよりは全然良いです。日差しは強かったものの、暑さがそれほどでもなかったのが幸いでした。
最初のお客様は、ご夫婦で来られた方で、奥様は東京地形散歩本を、ご主人は「怪獣使いと少年」をお買い上げ。同じウルトラマン&セブン世代の方でした。
次に売れたのが、出たばかりのスリバチ地形入門の新書。内容は東京中心なのですが、関西弁の方でした。こうやって地形の本は、最初からコンスタントにポツポツと売れていきました。
一番のオススメ、講談社学術文庫「東京の自然史」は、これもオススメの東京路地本と共に早いうちに売れてしまいました。「東京の自然史」は、地形の本を読むと必ず出てくるバイブル本で、入手できれば平積みでたくさん積み上げて売りたいと思っていたほど、今回のキモ本として出しましたので、早々に売れて嬉しいような悲しいような複雑な気持ちに。
一方、これは売れないだろうと思って出した、これも蔵出しの地図界のバイブル「地図のたのしみ」は、か細いメガネ男子が買ってくれました。聞いてみたら地図が好きというわけではないらしい。
上品な年配親子(母娘)のお2人は、「谷根千地図で時間旅行」をすぐに手に取られたので、「絵地図で歩く山手散歩 坂のある風景 下町散歩 川のある風景」もおすすめし、これはいいわねと散歩セットでお買い上げ。そのまま谷根千散歩にお出かけになりました。
出し惜しみで高めの値段をつけていた「凸凹を楽しむ東京スリバチ地形散歩」。3D地形のカラー図版が素晴らしい1冊。多くの皆さんが手にとっていたものの、なかなか売れなかったのですが、後半に「探していたんです」言って女性が買ってくださいました。そう、今は版切れで売ってないんです。見つけてもらえて良かった!
もう1つの出し惜しみ「樹を語る」は、出し惜しみの本は、売れ残ってもいいと思っているので値段が少し高めなんです…と正直にお話ししたらお買い上げ。本よさようなら〜。
くまモンの帽子をかぶった少年は、山本健太郎くんのオール手書き「文房具図鑑」を見つけ、テレビで見たよとお母さんに説明した後、長々と食い入るように立ち読み。最後はお母さんがちゃんと買ってくれました。
ゴキブリたちなど不快昆虫が表紙の平凡社カラー新書「家庭昆虫園」は、平凡社カラー新書を集めているおじさまへ。著者のお二人は、業界では有名な昆虫学者であることをご説明差し上げても、内容は関係ないんだよ…と、スマホで自分のコレクションリストを見せてくださいました。この本、売れ行きが悪かったのでなかなかみつからなかったのかな。
「虫屋さんの百人一種」を手に取ったおじさま。私が内容の説明をはじめたら、図書館で読んだから知っているとのこと。面白かったのでちゃんと買おうと思ったそうです。手元に置きたくなったんですね。
石巻の一箱以来、いつも買いに来てくださる駄々猫さんが、古ツアさんと来てくれました。クールに私の箱をご覧になっている古ツアさんが気になりつつも、駄々猫さんと蚕の本とカニの本の話を。かま猫さんにはカニ本を、数少ない黒っぽい本を次々と手にしていた古ツアさんには、その中から「獣の世界 ともだち文庫」(けだもののせかい)をお買い上げいただきました。タイトルは怪奇モノ風ですが、子供向けの動物の本なんです。これを選んでいただけるとはさすが!古ツアさんです。
おしまいに近くなって現れた若いカップル。ひやかしかなと思いつつ、「日本野生動物誌」を手にとったので、これには貴重なニホンカワウソの本物写真が出ていると説明したら、即買う気になってくれまして、他にも黒っぽい教養文庫も2冊お買い上げ。特に内容がかなり古くなってしまっている「島の旅」は「ありえない」と面白がってくれたみたいです。旅好きのカップルかな?と想像。
そして、生き物本のなかで、意外と多くの人が手に取ったのが、畑中章宏「蚕:絹糸を吐く虫と日本人」でした。畑中先生の民俗学的な蚕の話ということで、文系の方は「畑中章宏」で興味をもっている様子。しかし、私のオススメはそちらではなく、「蚕の城―明治近代産業の核
」という蚕の遺伝学のお話の本。養蚕の技術が現代の科学に大いに貢献していることがわかる本で、畑中蚕本(こちらも民俗学としては面白いのですが)を手に取る人に片っ端からアピールし続けましたが、なかなか売れませんでした。
しかし終了時間間際、どうしても気になって…と、男性が「蚕の城」を買いに戻ってきてくれました。いやこれは嬉しかった。しかもその方、私がInstagramで古本系写真がきっかけてフォローしていた方だったことがあとからわかってまたびっくり。
こうやって、売れ残りは結構ありましたが、真の私のオススメ本は全て売れ、こうやって印象深い本を並べてみると、結果としては地形&理系中心だったことが一目瞭然であります。そして先ほど改めて集計してみたところ、成果は61冊30,500円の売り上げでした。
お隣の「多摩や」さんは、実は不忍デビュー同期だったことがわかり、多摩やさんの「第1回怪奇オリンピック」の売れ行きを気にしつつ、自分の本を売っておりましたが、同じ場所に8店も出店していたのに、自分のことに精一杯で、ゆっくり他の皆さんの箱を見る余裕がなかったのが残念でした。皆様ごめんなさい!
一箱終了後は、書肆ヘルニアさんと多摩やさんでお茶をしてから表彰式会場へ。表彰されたみなさんの個性的な箱のお話を聞いて感心し、あいかわらずのダントツ売り上げのとみきち屋さんに感服し、昨日書いた通り、ひとりメシを食べて帰るはずだったのですが、ふと思い立ってオトメからまだ重たいカートを引っ張って往来堂さんへ。地形本好評記念で、未読だった「凹凸を楽しむ 東京「スリバチ」地形散歩 2」を買って帰ったのでした。本が減らない訳ですよね。
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そして一夜明け、今朝、出勤前にあちこちの巡回ブログを読んでいたら、古ツアさんのブログに自分が登場していたのでびっくり!私の「いきもの」的なところを評価して下さっていて、これまでそこで褒められたことはあまりありませんでしたので、大変嬉しゅうございました。これが今年の一番のエピソードだったかもしれません。ありがとうございます、重たいカートを引いての腕と肩の筋肉痛も、これで吹っ飛びました!
おしまい。
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