今年はじめの「みすず」の読者アンケート号で知り、その後まもなく買ったのですが、年末にしてやっと読み終えました。
思いのほか、ヘッケルの一元論が私には何回で、読みながら何度も寝落ちしてしまい、なかなか先に進みませんでした。
ヘッケルについては、もともと神保町歩きで偶然手にしたこちらの画集で知りました。もう10年以上前ですね。懐かしい。
Ernst Haeckelの画集「自然の芸術的形態」 - now and then
とにかくこの画集の細密画がまさに芸術的で、生物のスケッチにはあるまじきレベル。入手した当時は衝撃に近いぐらいの印象でした。そのヘッケルという人物は一体どういう人物だったのかはほとんど知りませんでしたので、今回この本は彼を知る上で非常に良い機会になりました。
恥ずかしながら、エコロジーの命名者であること、系統樹の父であることも全く知りませんでした。「ベントス」(底生生物)という言葉もヘッケルが命名したそうです。日本ではそういった面で知られていたようですが、実際はもっと大局的な大科学者だったようです。なおかつ、研究の中で、あんな細密画まで書くのですから、まさにマルチな才能とも言えます。
ヘッケルの様々は学説は、今となっては古臭いものであったりはしますが、当時の一般の人々に、自然科学を伝えるという大きな役割を果たし、社会的影響も大きかったようです。最初に書きましたが、学説というよりも思想・哲学に近い印象ですね。19世紀末のヨーロッパの自然科学の歴史でもありました。
「エコロジー」は生態学と訳されて、今や生物学の中心的な学問になりました。一般的には「エコな生活」のようなイメージの単語ですが、ヘッケルが造語として作ったエコロギー(英語でいうエコロジー)は「生態学」という学問の一分野のことです。ヘッケルが命名したこの学問が、今で言う「生態学」に発展するのはその後だったのだそうです。
そんな私にとっての新しい見地がたくさんあったこの本、科学思想史という分野を専門とされている著者の佐藤恵子さんの労作であります。ドイツ語の原書を含めた多くの参考文献を元に書かれており、このような形でまとめられたことにそのものに感銘を受けました。最後まで読み通した後にジワジワきてます。
少し難しいけれど、自然科学の歴史について興味のある方はぜひ読んでみてください。
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